姿ふっくら、良い香り。 作り手の人柄あふれる沖縄ピーマン。
健菜通信:今月の特集

姿ふっくら、良い香り。 作り手の人柄あふれる沖縄ピーマン。

2015年01月25日


沖縄本島の南部、太平洋に面した八重瀬町は沖縄ピーマンの名産地。
なかでも、金城正長さん(55歳)が栽培するピーマンは特別だ。
その人柄を思わせる素直でやさしい味がする。

 当たり前のことだが、南国沖縄にも冬は来る。観光客がめっきり減り、太陽の強烈な熱気が和らぐ季節は、沖縄にとって、野菜作りの季節だ。台風襲来の心配がなく、晴天が続く農園では、本土に先駆けて、春夏の野菜が旬を迎える。健菜倶楽部でも、数々の野菜を冬の沖縄からお届けしている。
 なかでも、好評なのが、沖縄ピーマンだ。とくに金城正長さんが栽培している「ちぐさ(別名ジャンボピーマン)」は、オランダ産パプリカと見まごうほど大きくて肉厚。このピーマンの時期の到来するのが楽しみという方も少なくない。
 その味には、柔和で真面目な生産者の人柄があらわれているといわれる。実際に、金城農園を訪れると、その言葉がよく理解できる。


丹精を込めた農園

「久しぶりですね」
 そう言いながら、金城正長さんは、本誌の取材チームを迎えてくれた。はにかんだような笑顔も、穏やかな口調も、10年来、変わらない。
 金城さんの農園は、沖縄県南部、太平洋に面した八重瀬町にある。さとうきび畑が点在する小高い丘からは、透明感を増した冬の海が見える。傾斜地にあるハウスには、微かに海の香りがしていた。
 そこは、いつ訪れても、「丹精を込めた」という言葉が思い浮かぶ農園だ。
 ピーマンの樹は勢いがあり、葉はほどよく乾き、さわるとカサコソと渇いた音を立てる。葉の色は薄く健康的だ。熱帯雨林を原生地とするピーマンは水が大好きだ。その水を与え過ぎず、細やかに管理しながら、ピーマンに味をのせている様子が見てとれる。

「まずは、かじってみてください」
 そう言いながら、金城さんは、艶やかなピーマンをもいでくれた。
 それを手で割り、生のままかぶりつく。果肉はみずみずしく、ぱりっと張りがある。でも表面の皮が薄くて、歯触りがいい。青臭いというとマイナスイメージだが、このピーマンの青臭さは爽やかで格別だ。
 わたしたちがかぶりつく様子を見て、金城さんの表情もほころぶ。
「わたしは、この品種が一番おいしいと思う」と話が始まった。
 金城さんが栽培しているちぐさは、生産者が減っている。味は良いのだが、実が大きいだけに、花が咲いてから収穫まで普通種の1.5倍の時間がかかる。それに収穫量が安定せず、経済効率が悪い。
 しかも、「大きすぎて肉詰めピーマンが作れない」という理由(!)で、本土の市場には、あまり出回らないのだという。
「でもわたしは、ちぐさを作り続けたい」と金城さんは言う。


待っていても、適地にはならない。

 ちぐさは、じつは、栽培環境や作り手によって、エグミや苦みが出るなど、品質に大差が出るピーマンでもある。
 金城農園の環境はどうだろうか。冬の八重瀬町は、低温のおかげで虫が発生しない。しかもボイラーなどで加温せずに、春夏野菜が栽培できる。ピーマン栽培には理想の気候だ。
 水は地下水を利用する。八重瀬町には、地下水を貯める地下ダムがあり、この水が野菜栽培の安定と安全を支えている。
しかし、土壌は理想とはいいがたい。
 一帯は、ジャーガルという沖縄独特の土に覆われている。腐植含有量が少なく(つまり痩せている)粘土質で、水はけが悪いのが欠点だ。金城農園の土は、幸い比較的水はけがよいが、それに甘んじる事なく、畝の作り方をはじめ、水はけをよくする農園を造営してきた。
「苦労しない人間が、『土が悪い』って言うんです」と金城さん。
 土の性質は人の力で変えられる。
「ピーマンの収穫が終わると、わたしは、すぐに土作りに取りかかります。豆科の植物の種を撒いて育て、それを土にすき込んでいく。
真夏は、土をビニールで覆って、太陽の熱で殺菌消毒。それから、それから......」と土作りの話は続く。来シーズンの栽培が始まるまでの3カ月は、土を育てる期間だ。連作障害を防ぎ、肥料を減らし、病害虫を防ぐには、土の状態がものをいう。この努力をかさねて、金城さんの農園はピーマンの「適地」になった。


地域での取り組み

 金城さんが、お父さんの農園を引き継ぎ専業農家になったのは十数年前だ。そのとき、農法を思い切って変えたという。以来、ピーマン栽培一筋だ。
 はじめは、「自分のピーマンを作ること」に夢中だった。
 でも最近は、ここ八重瀬町具志頭地区のピーマン生産者75人の集まりの会長に推され、地域全体の栽培技術の向上に取り組んでいる。仲間の農園で、立ち枯れなどのトラブルが起こると、丹念に観察して原因と解決策を探るという。
 それだけに、自分のピーマンの質を落とすわけにはいかない。いっそう栽培に磨きがかかるようだ。金城さんは、毎日、農園でピーマンと対話をしている。
 今月も、そんな金城さんのピーマンが海を越えて出荷される予定です。

健菜通信:アーカイブ

2018年 /  2017年 /  2016年 /  2015年 /  2014年 /  2013年 /  2012年 /  2011年 / 
ページの先頭へ