永田照喜治氏に聞く
健菜通信:今月の特集

永田照喜治氏に聞く

2015年04月01日


永田照喜治に聞く
野菜のおいしさを支える
育てる人の姿勢・食べる人の理解

健菜倶楽部顧問永田照喜治氏を訪ねたのは3月上旬。
農園では、春夏野菜の栽培準備が始まっていた。

 永田照喜治氏は89歳になる。氏が半世紀をかけて提案してきた永田農法は、海外メディアでも紹介され、広く知られるようになってきた。ある英文雑誌には健菜トマトの写真とともに、「本物の野菜、本物のおいしさ」のタイトルが踊る。
 国内外から農業指導に招聘されることが多い永田氏。「最近は遠慮しています」というものの、じつは、一人でどこにでも出向こうとする。周囲は心配して止めるのだが、本人はマイペースだ。
 生活ぶりも変わらない。庭先の実験農場で自ら鍬をふるい、野菜を育てている。

提案のある農園

...久しぶりに農園の様子を健菜通信で報告するのを、楽しみに来ました。

 ちょうど、冬野菜が終わり、春夏に向けて準備を始めたところなので、写真に撮る野菜がありませんね。
 農作業は、元研修生などが手伝ってくれることもありますが、この数日は、自分で畝作りをしています。ここには、バジルとオクラを植えましょうかね。
 バジルを栽培している人は多いけれど、最適な環境を分かっていませんね。土や水やりなどで栽培条件を整えると、香りの高いものが育つ。それを知らせたいと思っています。

...オクラにも理由があるのですか。

 オクラは花が美しいし、少量ずつ長い間、収穫が楽しめる。市民農園とか、家庭菜園で育てるとよいのです。その提案をしています。

...以前、日本の環境には適さないといっていたのに、オリーブの木がありますね。

 オリーブは乾燥した地中海沿岸の果樹です。高温多湿な日本では、良質な実を生らすことはむずかしい。
 それに、本当においしい実は、樹齢が100年どころか300年といった古木に生るものなのです。本場のイタリアやスペインでも、そういった老木が減っていて、その実はたいへん貴重になっていますが、私は日本で作ろうと思っている。
 盆栽でね。

...盆栽ですか?

 畑のオリーブは鉢に植え替えて、雨よけハウスに移します。それからの管理は盆栽の要領。水分を絞って樹木を引き締めていくと、100年後にはすばらしい実が採れますよ。

...百年計画ですね。他に関心を持っていることはありますか

 最近、気になる果実が橙です。柚子と同じように利用されてきたのに、最近、収穫されずに放置されている樹が増えています。見直してもらうために、何かできないかと考えています。わたしは毎食、大鉢いっぱいのサラダを食べますが、橙の果汁を絞ってかけています。提案したい食べ方です。

野菜の顔から生産者が見える

...最近、先生が注目している生産者はいますか?

 各地の生産者が、私に自分の作物を送ってくれます。「おいしくできた」という報告のこともあるし、アドバイスを求めて送ってくる物もあります。
 栽培の様子を見なくても、野菜の面構えや味が多くのことを語ってくれる。がんばっている生産者は多いですよ。
 永田農法というのは、農業技術ですが、技術だけでなく、志がないと続きません。例えば、この野菜の箱は、脱サラして高知で農業を始めた人が送ってくれました。注目している生産者の一人です。
 彼らの野菜作りは、下手です。けれど、私は、大いに買っている。それは、自分たちの未熟な能力を見極めて、大量に作らず、こつこつと工夫を積み重ねて、野菜の質をよくしているからです。
 こうした生産者を応援したいですね。

...特に若い生産者が育つ支援をすることが大切だと思っています。

 私は、長年、永田農法を指導してきましたが、その中で、もっとも成功しているのが、健菜の生産者たちです。その理由は、もちろん生産者自身が、量より質という姿勢や、野菜の生命力を引き出す栽培法の本質を理解し、研鑽を積んできたということがあります。
 でも農業は趣味ではない。経済です。それを理解して支えてきたのが、お客様たちです。
 世間では健菜を食べているのは、お金持ちというイメージがあるようです。でも本当のところは、高い見識がある人たちの集まりなのです。その人たちが本物のおいしさを支えている。
 この関係がある限り、健菜は特別な野菜であり続けると思います。また、そうしなければなりませんね。

...はい、襟を正して、野菜のお届けを続けていきたいと思います。

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