健菜通信:今月の特集

命の力で旨くなれ! 原点トマト、ここに在り

2018年01月01日
トマトの栽培技術では、他の追随を許さない。
そんな生産者がいる日向を訪れた。

 宮崎県日向市には、30年前から永田農法によるトマト栽培に取り組んでいる生産者たちがいる。安藤広信さんはそのキーパーソンだ。
「キャリア150年と言いたいほどですが、ダメですか」
 笑いながら話す安藤さんは、健菜倶楽部顧問だった故・永田照喜治氏のもとで学んだ研修生の草分けだ。20歳頃から浜松市の実験農場だけでなく、沖縄や北海道など自然条件が異なる各地でトマト栽培に関わり、年に5〜6作を経験。ふつうは1年1作だから、その数倍になる計算。もちろん失敗や自然災害に遭遇したことも数倍になるはずだ。

 そんな安藤さんが健菜倶楽部のために育てているのは、"自らの力でおいしくなる"、つまり永田農法のセオリーが見事なまでに結実したマルトマトだ。

「もう一つ」と手がでるトマト

 その農園はみかん畑に囲まれた、山腹にある。ふつうの野菜栽培では利用しない立地だが、安藤さんは「ここだから健菜トマトができる」と語る。周囲より一段高く、農園全体が畝の上にあるようなものだから、水はけの良さは抜群だ。土壌は礫混じりの赤土、長い日照時間、昼夜の大きな寒暖差、そして吹き抜ける風など、数々の好条件を備えている。安藤さんが管理する農園は10カ所以上あるが、ここの環境は格別。だから特撰級のみを栽培すると決めている。
 そこではマルトマトが収穫のピークを迎えつつあった。青い実には鮮やかなグリーンベルトが浮かび上がっている。品種は「マル」なのに、先端がとがった実も多い。実は小さいが力強く、「どうだ」と言わんばかりの存在感を放っている。
 実や茎、葉に密生している産毛は、猛々しくて美しい。根も見事だ。細かい根がびっしり繁茂している。
「ふつうの人には『だから何?』と言われそうですが、トマトのおいしさを生むのはこの糸くずのような根。これを生やすことが永田農法の第一歩であり、そしてゴールです」
 では、その根が育てるトマトとは? 返事は素早かった。
「一つ食べると、『もう一つ』と思わず手がでるトマト」
 糖度が高いだけではない。糖と酸のバランスがとれていて、果肉にはまとわりつくような粘りがあるものだという。
「養液で無理に糖度を高めているトマトも多いけれど、それは1個で飽きる。何個でも食べたいと思うのは、植物が自分の力でおいしくなったものではありませんか」

「何一つ欠けても、このトマトはできません」と安藤さん。
 土壌、気候、極限まで減らしている肥料や水の繊細な管理、日々の手入れのどれが欠けても健菜トマトは生まれない。中でも、欠かせないのは、「人」だ。

人と技

 安藤さんは人にも恵まれている。トマト栽培を熟知するスタッフが周囲に何人もいるからだ。
 この日、幹の誘因と収穫作業に追われていた小西利子さんもそのひとり。「葉の状態を見て、予定していた灌水は止めましたよ」と報告する小西さんは栽培歴25年。
 トマトの幹には、その細やかな仕事ぶりが表れていた。整然と並んだ幹のすべてが同じように、最も下方に完熟に近い実、中間に青く小さな実、そして上に受粉を待つ花を付けている。この高い技術のおかげで品質も収穫も安定する。
「すべて任せていても安心です」と安藤さん。

 一方、「これから面白い」と安藤さんが案内してくれた別の農園では、児玉恵智子さんが、カラートマトの栽培をしていた。栽培歴30年の児玉さんは、種から苗を育てたり、新品種の実験栽培をする基幹農園を切り盛りしている。取材時は、7色のトマトそれぞれの最高の食味を引き出し、出荷できるようにデータを取り、本格生産前の準備をしていた。
「彼女は芽を見ただけでトマトの糖度が分かるんです」
 そう語る安藤さんの誇らしそうだったこと......。
 さて、取材から1年。自然、技術、そして人に恵まれた安藤さんのトマトお届けが始まるのは、間もなくだ。


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