天候に恵まれた棚田で 苗がすくすく育っています。

今回は、県外移動自粛中の健菜俱楽部スタッフに代わり、私、山本秀一が永田米研究会を代表して棚田のレポートをします。

 健菜米コシヒカリの田植えは、5月17日から始まりました。すべての農家の作業が終わったのは27日。
「天候に恵まれてよかったね」
 今年は、どの生産者もホッとした様子で開口一番に口にします。それには訳があるのです。
 じつは、今冬は暖冬で雪が積もらず、米づくりの準備を始めた4月には、田植え前に深刻な水不足になるだろうと予想していました。その危機感はかなりなもの。何しろ、吉川の水源である尾神岳にすらまったく雪がありません。いつもは雪解け水が轟音を響かせて流れている吉川も静かなものでした。
 田植え前には、田んぼに大量の水が必要ですが、果たして、足りるのか。その心配から、みなで対策をあれこれと相談し、身構えていたのですが......。
ありがたいことに、雨に恵まれました。その降り方もほどよくて、日照も十分。こんなに順調な天候は滅多にありません。

 田んぼの準備だけでなく、育苗にとっても申し分ない気候でした。発根数が多くて元気な苗を「健苗」と言いますが、その決め手となる栽培時の温度や水分調整もセオリー通りに進めることができ、しっかりとした健苗を植えることができました。幸先のよいスタートです。

地域で助け合いながら

「少しさびしいね」
 そう呟くのは、長年、米づくりをする東京のグループを自分の棚田で迎えてきた大賀地区の中村昭一さん・玲子さん。今年は、その一行が田植えに来られませんでした。その代わり、近隣の親戚や、最近、大賀に移住してきた青年が助っ人に加わってくれたようです。
 じつはわが家の様子もいつもと違いました。田植えは、都会から長男・次男家族がやって来て、一緒に作業をする一大行事です。でも、今年は集まることは諦めて、お隣さんに手伝ってもらいました。

 生産者のほとんどが同じような状況です。地域のつながりが田植えを支えてくれました。お互いが同じ吉川で生きていく仲間だと、改めて感じた住人は、私だけではないでしょう。

おいしさを極めるために

 田植えから2週間。メダカやオタマジャクシが元気に泳ぎ回っている棚田の苗には、健菜米らしい特徴が現れ始めています。田植え直後の苗は、弱々しくて、葉が黄色くなるのですが、その後、新しい葉がすっと伸びて、茎がぐっとたくましくなりました。地中では活着が進み、根が土中の養分を吸収。苗を1本、引き抜いてみると、わらわらと増えた根が土塊をしっかりと捉えています。生育状況は、上々です。
 永田農法による健菜米づくりの基本は、肥料・農薬を限りなくゼロに近づけて、稲の健康を高めることに尽きるのですが、30年間、続けてきても「これでいい」はありません。例えば土づくり。これまで微生物の働きが活発な土壌づくりを心がけてきましたが、昨年の秋からは、さらに新たな土壌改良を試みています。力を注いでいるのは、ある菌を加えて、根のりん酸吸収率が高くなる環境を創出すること。植物の三大栄養素であるりん酸は、開花や結実をうながす重要な栄養素。実の甘みにも影響を与え、りん酸が不足すると実の収穫量や品質が低下してしまいます。今、私たちは、化学肥料を加えるのではなく、根が土壌のりん酸を無駄なく吸収できる土を、菌の力でつくっています。
 私たちは、「おいしさを極めます」と、健菜米を食べてくれる人と約束をしているようなもの。そのために、いろいろな工夫を重ねてきましたが、今回の土づくりもその一つ。成果がはっきりとわかるのは、収穫後ですが、今から楽しみにしています。

 米づくりの3分の1が終わった今、「すこぶる順調ですよ」と報告できることはうれしいことです。とはいえ、稲作はこれからが本番。最近の長期予報では、空梅雨になるかもしれません。気を引き締めて取り組みます。

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