おつかい物にしたい普段食
世の中には、これ見よがしに「高級品」とか逆に「自然派!」とパッケージで訴えながら、中身は普通どころか、「お化粧で誤魔化した味」という食品がありますね。商品だから、当然の工夫かもしれません。でも、あまりに落差が大きいと、不正直だとすら感じることがあります。
その点、健菜の調味料や食品は正直。外見は飾り立てず、小手先で味を演出することもありません。原料の品質や製法にこだわるから、いたって素朴ですが、それがいいのです。そして常々、その代表だと思っているのが、健菜青大豆納豆です。
「今どき藁苞があるの?」と、はじめて健菜の納豆を見たときは驚きました。香ばしい藁苞を左右に開くと現れる納豆は、見たことがないほど大粒で、堂々とした存在感。
食べてみるとしっかりした噛み応えがあります。それに発酵食ならではの香りや旨みと同時に、もともとの煮豆の自然な甘さや旨みがあり、びっくりの連続でした。
だから私はたちまち気に入ったのですが、夫の反応は違いました。
健菜の納豆を食べる時は、私は2種の小鉢を用意します。一つめは、夫のためのひきわりの小鉢です。二つめの小鉢は、納豆をあまり混ぜずに、箸でつまんで食べる自分用。小鉢には、お醤油を数滴たらすか、塩や味噌、柚胡椒をちょんとのせるだけ。近所で購入できる小粒納豆ではその気になれない、健菜納豆限定の食べ方です。
「ご飯と混ぜるには大粒過ぎるし、糸が少なくてお米と絡まない」というのです。なるほど、一理あります。
そこで、昔、母がしていたように納豆を粗く刻んでみたら、これが大正解。市販のひきわり納豆とは別物です。糸の引きもよく、豆の風味が高くて、夫も「いいね」と意見を変えました。
今でこそ、大豆の産地や品種を謳う納豆を見かけますが、健菜納豆の販売が始まった10年前に表示されているのは「国産大豆使用」程度のことでした。それなのに健菜は、本紙の「土かぜ日記」でもお馴染みの生産者、男鹿市の大越昇さんの青大豆に原料を限定したのです。この豆の甘さや香りの良さは有名です。しかし納豆業界人に言わせると、大粒は納豆菌の浸透に時間がかる上に製造がむずかしいので、敬遠されるはずだとか。それでも原料の品質にこだわるところは健菜らしい。
その上、わざわざ藁苞を容器にするなんて...。納豆に残る藁の移り香まで貴重に感じます。
だから先日、恩師の家を訪問するという夫に「健菜納豆をお土産にしたら」とすすめてみました。でも夫は「何だかんだと言っても納豆は納豆だからな〜」と不賛成。お土産はよそゆき顔のお菓子などがいいというのです。
それは常識だけれど、訪ねるのは、静かに豊かな暮らしをしているご夫婦。普段食なのに贅沢な健菜納豆のほうを面白がり、絶対に喜んでくれるはずなのに、夫は分かっていませんね。
(ライター・神尾あんず)
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