わたしは健菜トマトジュースが大好きです。朝も夜もぐいぐい。夜は、ウオッカを少しだけ加え、ブラディ・マリー風にすることも。酸味があって、旨みも香りもいい上色も美しい。さわやかなほろ酔いカクテルです。
このジュースの販売開始当初は、あちらこちらの人に「おいしくて驚くはず、試してみて」と熱く語っていました。まるで伝道師。その気持ちが最近、少しよみがえったことがあります。
それは、沢木耕太郎の「マリーとメアリー」というエッセイを読んだ時のこと。彼は、昔、国際線で客室乗務員に「食前の飲み物は?」と訊かれると、不思議なことに、条件反射的に「ブラディ・マリー」を注文したといいいます。ふだんの生活では、無縁の飲み物なのに...。
そして村上春樹も同じ習慣があり、それを「空の上のブラディ・メアリ」というエッセイに書いていることを知るのです。
じつは、わたしも同じ。
若い頃、長距離の国際線に乗ると、トマトジュース(最初の1杯)とブラディ・マリー(退屈すぎて、酔うしかない!)を必ず頼みました。機内食の紙味のサラダより、そのほうが野菜らしさを感じたのでしょう。野菜代わりです。ただし、地上では、全く飲みませんでした。野菜代わりより、本物の野菜のほうがいいに決まっていますから。
それが変わったのは、健菜トマトジュースの登場以後。冷蔵庫に常備するようになった理由はシンプルです。
おいしいから。
さて、くだんのエッセイには、ブラディ・マリーについて「赤黒い色をした」という表現があります。また、村上春樹が認める機上のブラディ・マリーの条件も紹介されていて、「大柄のグラス、ウオッカとジュースの混ざり具合、氷の量、ソースがぴりっと効いている」などと書き連ねてあるのです。
けれど、たいせつな条件が抜けています。
それは、おいしいトマトジュースを使うこと。これがいちばんの条件でしょう。
昔は、選択できるほどのトマトジュースがなかったから、仕方ないかもしれませんが...。
今は、旨みがあるジュースを選びさえすれば、ソースどころかレモンも要らない気がします。それに健菜トマトジュースなら、色も清々しい。わたしは、敬愛しているふたりの作家に、健菜ジュースをプレゼントしたいぐらいです。
もっとも、おふたりともすでに、ご存じかもしれません。だとしたら余計なお世話ですね。
(神尾あんず)
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