飛行機でJALの機内誌を手に取ると、まず浅田次郎さんのエッセイを読むというのは、わたしだけでしょうか。雑誌の内容が刷新されても、この連載だけは長く続いており、きっと同好の読者がいるのでしょう。
さて、その7月号のテーマは「納豆」でした。いつもながら巧みな文章で昔の思い出が描かれた後に、最近の納豆が、小分けされた発砲スチロール入りで、さらに小粒ばかりになっていることに嘆息しているのでした。
浅田次郎さんは、健菜の納豆をご存知ないのですね。かなり納豆好きなご様子なのに、それはちょっともったいない。
健菜の納豆は、びっくりするほど大粒です。きっと納豆菌が浸透するには、かなり時間がかかるはず。原料は永田農法で栽培された青大豆ですが、食べてみると、もともとの豆の質の高さが、発酵後もモノをいうことがしみじみわかります。
旨みが高くて、他では経験できない確かな食べ応えです。
以前は、藁づとに包まれていましたが、今春から、包装が経木に変わりました。安全面を重視しての変更だそうです。
夫は「藁じゃなくなったのか」とがっかりしていましたが、わたしはむしろ経木歓迎派。
経木には抗菌作用があるし、ほどよく湿度を保つ上、納豆に自然な木の香りが移って、味わいをよくしてくれると思います。それにゴミの量が減ったことも良いですね。
わが家は、大きめの鉢に青大豆納豆を入れ、ごりごりとかき回して、糸をたっぷり引かせるのが好み。糸の中に豆が隠れるほどにしてしまうのは、下町風だそうです。そこに芥子とお醤油をたらり。薬味はあまり使いません。
義母が滞在しているときは、ひと手間かけて、納豆を細かく刻んでからかき混ぜます。これがまたおいしいのです。白いご飯とほどよく絡んで旨みがたっぷり...。おかずを忘れ、納豆ご飯だけ食べている自分に気づくこともあるのです。
健菜の納豆は製造日が限られていて、月初にしか手に入りません。ちょっと残念ですが、月のはじめにせっせと味わうことにしましょう。
先のエッセイで、浅田次郎さんは、家族が食卓を囲んで、鉢から納豆を取り回した朝食の様子を懐かしんでいました。
その朝食シーン、わが家には、今も残っています。
(神尾あんず)
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