ブルーベリーコンポート

あ、ジャムじゃない!

「このジャム、やわらかいな」
 夫が1年前と同じことを言っています。すると、泊まりに来ていた義母が私に代わって、決め台詞を返してくれました。
「これはジャムじゃなくてコンポートよ」
「去年も食べたじゃない」と。
 いえいえ、お母さん、一昨年もその前も食べていますよ〜。でも、久しぶりに新物を開封すると、必ずスプーンからこぼして、「やわらかい」と言うのです。そして、「おいしいなあ」と言いつつ、大量消費。これ、恒例です。

手作り派の脱帽

 義母は「健菜のは、不思議ね」と言います。地方都市の郊外で暮らしている彼女は、庭のブルーべリーでジャムを作り、ご近所さんに配ることが楽しみの1つ。それが、わが家で健菜ブルーベリーコンポートを食べてから、同じものを再現したいと、レシピを工夫しているそうなのです。
 ブルーベリーは煮詰めると、形が崩れてしまう。だからといって、シロップの中でひと煮立ちさせるだけ(これが普通のコンポート)では、とろけそうな食感には仕上りません。
「さすがにプロは違う。真似できないわ」と義母。
 健菜の作り手はフレンチのベテランシェフだそうです。きっと、素人には分からない技があるのでしょう。
 でも、わたしに言わせると、その歳で、プロの味に近づこうという義母の向上心こそ、さすが! 真似できません。

心ひかれる厨房

 そんな会話を交わした夜のこと。
 京都の料理人のドキュメンタリー番組を、こだわりぶりに感心したり、「そこまでやるの」とツッコミを入れながらふたりで観ていたら、無性に京都に行きたくなりました。そこで、「一緒においしいものを食べに行きませんか」と誘ってみたのですが、義母は一向に気乗りしない様子。贅をこらした美食には、まったく食指が動かないのでしょうか。
「どちらかというと、わたしはコンポートを作っているお店に行ってみたいわね」
 お母さん、それ、九州です。でもシンプルな素材でていねいに料理をするシェフに心ひかれる気持ち、わたしにも分かります。
 来年、義母は傘寿を迎えます。そのお祝いは九州旅行かな。夫どの、お母さんの希望を忘れないでくださいね。
(神尾あんず)


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