天竜の蜂蜜

日本の森は3つ星

「ピラミッドの中から蜂蜜が見つかったという話、知っている? 変質すらしていなかったとか」
 エジプト考古学者の知人に、ネットで仕入れた情報の真偽を確かめたところ、予想どおりの返事が返ってきました。
「んなわけ、ないでしょ!」

養蜂をしていた 古代エジプト人

 とはいえ、古代エジプトの遺跡には、神に蜂蜜を捧げるところや養蜂の場面を描いた壁画がいくつか残っています。ツタンカーメンの遺物には、「質の良い蜂蜜」と記された壺もあるのだとか。その頃、「甘い蜜」は非常に貴重で、そ して神秘的な食べ物。口にすると、うっとりしたに違いありません。
 そんな会話を交わしていたのは、蜂蜜がけした青カビチーズのピザを食べながらのこと。じつは30年前、カイロでホームステイしていた私は、エジプト人に教わった、フランスパン+山羊のチーズ+蜂蜜という夜食にはまりすぎて、体重が激増したことがあるのです。しかし、東京のレストランの蜂蜜は甘いだけでパンチがなくて、「エジプトの夜食が懐かしい」「蜂蜜選びにもこだわるべし」と、蜂蜜談義が始まりました。
 彼は「古くからの採蜜歴がある、トルコの森の蜂蜜がいい」と言いますが、あれは巣ごと売られているし、松の香りが強い気がして、私は苦手。「日本のほうが上」という私のイチオシは、ニホンミツバチの森の蜂蜜です。
「このピザが格段においしくなること請け合い」と。

森が生んだピュアな味

 健菜の「天竜の蜂蜜」は、日本独特の照葉樹林や果樹が蜜源だからでしょうか、酸味がやさしくて、甘さも旨さも複雑で濃厚なのに、後味はピュア。とてもおいしいです。
 癖のあるチーズにも合うし、フレンチトーストにも欠かせません。古代エジプト人でなくても、ちょっとうっとり。冬は、レモンの蜂蜜漬けでホットドリンクもよいものです。
 ところで、古代エジプトの蜂蜜はどんな味だったのかしら。
「きっと、今のエジプト産と変わらないよ」と彼。エジプトに森はないので、古代の蜂蜜も、デルタ地帯やオアシスの草花由来の花蜜であることは確かです。やはり、森の蜂蜜のほうがおいしそうです。
(神尾あんず)

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