健菜のりんごジュースが好きです。他と何が違うのかしら、と考えてみると、甘いのにしっかり酸っぱいところかな。香りが華やかなことかもしれません。特に冬、からからに乾いた空気の中で、喉を潤すにはぴったり。小さなグラスで、クッと一杯飲むだけで「満足!」と感じるのは、果汁が濃厚だからでしょう。夏、ごくごく飲むのもいいけれど、冬もまた良し。わが家では、冬もりんごジュースを欠かしません。
ジュースの原料は、「あかねりんご」という品種。でも、東京の果実店で見かけたことがありません。私は健菜のパンフレットで初めて知り、美しい名前が印象的でジュースを注文しました。最初は味より言葉の響きに心ひかれたのです。
漢字の「茜」から連想されるのは秋の夕焼け空の色ですが、伝統色である「茜色」はこっくりとした赤、大人好みのやや渋い色です。万葉集の句にも「あかね」は登場します。例えば、額田王が恋人である中大兄皇子の姿を詠んだ有名な句。
「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」
「あかねさす」は、日の光に照り映える様子を意味する枕詞ですが、万葉人は朝日を連想していたのだとか。恋人が野にいるのは朝なのか、夕暮れ時でしょうか。印象が少し変わりますね。
さて、あかねりんごの所以となったのはどんな色なのかしら。ピンク色のジュースから連想されるのは秋の夕焼けですが、朝食時に飲むと朝日の色のような気もします。写真で見た果皮の色は伝統色の茜色に近いかもしれません。果肉は白いそうですが、味の印象は色に例えられるかしら。
さて、話変わって、冬ならではの飲み方を紹介しておきましょう。コロナ禍の影響で外食が減り、家で新しいレシピを試す機会が増えました。アメリカに駐在していた従姉妹から教わった「ホットアップルサイダー」はその一つです。サイダーとはいえ、発砲の要素はゼロ。熱々のジュースにシナモンやクローブを加えるだけですが、これがなかなかおいしいのです。体がほっこりと温まるのも、甘酸っぱい香りがパッと広がることも、スパイシーな味もいいですよ。なぜ、今まで試さなかったのかしら。これ、冬の定番の飲み物になりそうです。 (神尾あんず)
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