三者三様、絶品桃がそろいぶみ / 山梨・長野、3人の桃生産者を訪ねて

 桃の出荷が7月から始まります。完熟フルーツ頒布会の「白鳳」を手がける山梨の二人の栽培名人、そして、「黄金桃」を栽培する長野の篤農家を訪ねました。

 今回ご紹介するのは、3人の栽培名人。2人は甲府盆地の東に園地がある。広大な盆地の中でも、コクのある桃が育つ自然条件をそなえた土地だ。そして3人目の名人の園地は、長野県北部の須坂市。ここも、年間通して雨が少ない、絶好の栽培適地だ。個性豊かな3人の、栽培の様子をご紹介します。

自然に沿った、ユニークな栽培
高橋家正さん

 高橋家正さんの果樹園は笛吹市、笛吹川水系の河岸段丘上にある。桃の樹の根のすぐ下は、ガラガラの礫層が広がり、水はけが極めてよい土地だ。ここで、栽培歴50年のベテランである高橋さんは、ユニークな栽培を続けている。
 高橋さんの桃の樹は、変形主幹形という樹形をベースとして、背が高い。この樹形は桃では珍しく、ほかの生産者も「そんな作り方する人がいるんだ」と驚くほど。
「このほうが余計な枝がでないし、陽がよく当たるから、いいと思ってやっているよ」と高橋さん。「味はいいけれど、背が高い分作業は大変なのよ」と奥様が付け加える。
 そして高橋さんは摘果をしない。生命力の弱い実が自然落下するのを待ち、健やかな実だけを残すのだ。「自然の法則があるっちゃね」
 自然に寄り添った農業とはこのことか、と改めて考えさせられた。
「今の人は旨いもんがよう食べれんようになったね。残念な時代だよ」と高橋さんは突然切り出した。果皮が傷つきやすい桃はめったに完熟ものが流通しない。でもそれでは納得できないと、高橋さんは完熟を譲らない。輸送リスクは格段に上がるが、梱包に手間を惜しまず、出荷してくれるのだ。
「喜んでくれればそれで満足」と眩しい笑顔の一言だった。

果樹を育てるエキスパート
小林直樹さん

 山梨市の小林直樹さんは、日川・加納岩・浅間・夏っ娘など、白鳳・白桃・黄桃系のさまざまな品種をリレーして栽培する。
 桃には多くの品種があるが、そのほとんどが不安定で枝変わりしやすいという。そして1本の果樹でさえ、枝により個性があるのだそうだ。
 就農して30余年、小林さんはほぼ独学で桃作りを学んできた。どの枝にどんな実がつくか、品種によりどんな特徴があるのかなど、すべてを観察し、知識にした。
「たとえば白鳳系と白桃系では、よい実がつく枝は違うんです。桃作りが上手な人でも、案外知らなかったりするんですよ」
 枝の個性に沿って、かつ、葉の数や日当たりを計算して剪定された樹は、糖度や大小のばらつきが少なく、どれも安定して高品質だ。

 そして、果樹に対する知識は、実を作るだけでなく、苗木を作ることにも役だっている。小林さんは枝を選抜し苗木に仕立てる、果樹のブリーダーでもあり、県内の果樹園に出荷しているのだ。「みなさん『いい苗だねえ』と褒めてくれます。自分のところだけじゃなく、産地の品質も底上げできればうれしい」と、産地を守ることにも一役買っている。
 もちろん、自らの園地も自分で増やしてきた良質の果樹ばかり。風味のよい、最高の果実が実る。完熟して栄養をたっぷり蓄えた桃は、横にグッと張ってはちきれそうなほど。とびきり甘くてジューシーだ。「私はちょっと子どもっぽいところがあってね。なんでも自由に工夫してみたくなる。妻には、何を始めるんだ、と叱られることもあるけれど」と笑う小林さんは、楽しみながら、最高の桃作りをしてくれている。   

お二人が栽培する「白鳳」は『完熟フルーツ頒布会』の7月の果実として、7月中旬ごろ、出荷の予定です。ご注文はこちらをご覧ください。

無肥料、無袋の紅色黄金桃
吉池稔晴さん

 長野県須坂市は、千曲川へ注ぐ幾筋もの支流が作る扇状地。水はけのよい土地、朝夕の寒暖差が、果樹栽培に最適だ。
 ここからは、一昨年より、無肥料栽培の黄金桃を、健菜倶楽部へ出荷してもらっている。生産者の吉池稔晴さんは、仕事も遊びもとことんやりきる熱血漢。豪快で歯切れのよい物言いが、とても気持ちのよい人物だ。
「うちの黄金桃は見てくれが悪いから、味をわかってもらえるまでにずいぶん時間がかかったなあ」
 黄金桃は、果皮の色を守るため、収穫まで袋がけして育てるのが一般的。無袋栽培はごく少数だ。
 一方、吉池さんの黄金桃は、最初から最後まで一切袋がけしないから、果皮は真っ赤に染まる。それが市場では「見栄えが悪い」と評価が下がってしまうのだ。
 でもその存在感は圧倒的だ。見る人が見れば、なんと力強く、おいしそうな黄金桃だと思うだろう。
 長い時間、陽光に照らされた黄金桃は、しっかりとした果肉で白鳳や白桃に比べると固い。しかし繊維質はきめ細かく、追熟させるとねっとりとした食感に変わり、なめらかな舌触りが楽しめる。甘みも格別だ。


「ここは、もう何十年も肥料をやっていないんだ。人から『よく実がなるね』と驚かれるけれど、ちゃんと実ってるだろ?」と、吉池さんは自慢げだ。肥料と言えるのは、刈った下草を土にすき込むことくらい。長年の栽培で熟成した土は、余計な栄養分がなく、永田農法に理想的だ。
「生産と販売とお客様がつながる、顔が見える仕事がいいね」と吉池さん。真っ赤な黄金桃の価値をわかってくださる方々に届けたいと願っている。
黄金桃のご注文はこちらをご覧ください。

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