旭川から30キロ、北海道上北郡和寒(わっさむ)町は、夏でも30度を超すことがないくらいの爽やかな土地だが、冬はマイナス30度の厳寒の地に姿を変える北の大地だ。
和寒という町名はアイヌ語「ワットサム」が語源で、「ニレの木の傍ら」という意味をもつ。ニレの森は開拓で姿を消してしまったものの、小高い山に囲まれた平坦な地形の中、天塩川が悠々と流れる景色は、北海道らしく雄大だ。
「和寒は、かぼちゃの作付面積全国一。冬至のころ、日本一遅くまでかぼちゃを届けられる産地なんです」と紹介してくれるのは、西川直哉さん。父・賢一さんとともに、西川農園を切り盛りする生産者だ。
このあたりは、かつて暴れ川で知られた天塩川の流路だったところであり、ちょっと掘りかえせばガラガラの石ころだらけ、砂混じりの土壌は水はけ抜群。甘味の強いかぼちゃを栽培するにはうってつけの土地なのだ。
「息子が帰ってきてから、畑が賑やかになりましたね。私の知らなかった野菜がどんどん増えていく」と、賢一さんは興味深そうに直哉さんの畑をのぞく。
東京の農業関連の出版社で勉強を兼ねて働いていた直哉さんが、名人と呼ばれる父の元に帰ってきたのが12年ほど前のこと。それまで米・かぼちゃが面積のほとんどを占めていた西川農園には、少しずついろいろな作物が増えていった。
「はじめは知り合いのレストランに頼まれて作っていたのですが、栽培の研究を重ねていくうちに、おもしろくなってきました」と直哉さん。
農園にはズッキーニ、パプリカ、ミニトマト、甘長とうがらし、生で食べられるとうもろこし...などなど、さまざまな野菜があり、色とりどりで賑やか。健菜でもズッキーニ、甘長とうがらしをお届けし、好評を博していた。
それらの野菜がおいしいのは、直哉さんが取り入れた、土壌のミネラルに対する考え方にもある。
一般的な化学肥料は窒素・リン酸・カリを主成分としているが、それだけではなく有機質と微量要素(ミネラル)にも目を向け、土壌のバランスを整えている。肥料を多くすると病気にかかりやすくなることに気づき、減肥料・減農薬をすすめ、研究会を立上げた。仲間と議論を重ねながら、よりおいしく、安全・安心な野菜作りを目指している。
もちろん、それは賢一さんが経験的に行ってきたことだが、直哉さんは自分なりに研究を重ね、体系化していった。
それが功を奏して、西川農園は新しく取り入れた野菜も、高いレベルのものが揃う。
「これから秋にかけては、もっとも忙しい時期。一日一日が勝負ですね。健菜のお客さまには、私たちの農園でも一番の旬にだけ出荷しているので、まちがいのない品質のものをお届けしています」と直哉さんは、胸を張ってくれた。
広い農園を駆け回って、収穫の日々は続く。そしてそれが一段落すると、早ければ10月の終わりごろには雪がちらつきはじめるという。北海道の夏はじつに短い。
雪が本格的に積もる12月にもなると、ふつう北海道では農作業は終わっているものだが、ここ和寒には、かぼちゃと並んでもう1つ有名な作物がある。雪から掘り出して出荷する「雪の下きゃべつ」だ。
雪の下きゃべつは、豪雪地帯ならどこでもできるわけではない。和寒の積雪量、風土に適した天然の貯蔵方法だ。
健菜でも何度か届けてもらっているのだが、そのおいしさは「これがきゃべつ!?」と驚かれるほどの甘味とみずみずしさ。
秋の気温低下で高まった糖分は、雪の低温と、適度な湿度の中で貯蔵することで、ゆっくりと熟成されて、さらに甘味と旨みを増していく。
「その年の気候にもよるので、今年お届けできるかはまだわからないのですが、きっとびっくりするくらいのおいしさですよ」と直哉さん。
和寒の冬が作る、極上のきゃべつも、雪を楽しみに期待して待ちたい。
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