ノアムーティエの塩

旨いまずいは塩次第?

 「旨いまずいは塩加減」ということわざを、私はなぜか「旨いまずいは塩次第」と覚えていました。これでは意味が微妙に違います。調味料はいろいろあれど、塩ほど料理の味を左右するものはありません。当然、その微妙な量やタイミングなどの「加減」が第一。でも、塩の質も侮れないのでは? そう感じているのは、ノアムーティエの塩を常備しているからかもしれません。

味を引き立てる力

 ノアムーティエの塩を使い始めたのは、100パーセント自然の力で作られているから。海水を天日で乾燥させただけの塩は、海に由来するミネラル成分が豊富です。塩化ナトリウムの純度が高い塩より、料理の味に深みが出るのではないかしら、と。私の料理の腕を考えると、それを言うのは少しおこがましくもあるのですが......。
 栄養士の友人は「ノアムーティエの顆粒塩は塩辛さにキレがある」と言います。ところが私は「マイルドなしょっぱさ」と感じていて、感想が逆。けれど、漬物やスープに使うと、旨みや甘みをぐんと引き立てるという点では意見が一致。私は、この顆粒塩を使った時と、国産の天日塩で南高梅を漬けた時の仕上がりの差に、それを痛感しました。友人は「塩むすびだと差が歴然」とか。フランス産なのに和食でもいい仕事してくれます。
 ところで、産地がどんな所かが気になり、YouTubeで「Noirmoutier」と検索したことがあります。ノアムーティエは美しい海に囲まれた小島で、環境保護への取り組みも熱心な様子。さらに「sel(塩)」と検索ワードを追加したら、製塩風景がいくつも見つかりました。四角い塩田が拓かれた様子は日本の水田地帯を思わせます。そして、そこで働く人たちの姿に、改めて「なんと牧歌的な景色!」と感心しました。

守られている素朴な方法

 島の修道院で7世紀に始まった塩づくりは、海水を陸地に引き込み、太陽と大西洋を吹き渡る風の力で塩分濃度を高めていくもの。塩を得るには、何カ月もかかるし、職人さんは体力だけでなく技も必要です。最初はフランスにこんな素朴な方法が残っていることが意外でしたが、美食だけでなく安心安全に関しても意識が高い国民が多いフランスだからこそ、大切に守られている製塩方法なのでしょう。大切に使いたいと思います。
(神尾あんず)


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