うっかりしていました。冷凍庫に残っていると思い込んでいた豚肉がありません。毎月届く健菜の金華豚のストックを切らすことは滅多にないのに......。
これもコロナ禍の影響です。外食もままならず、「せめて自宅でウンとおいしいものを」と、わが家にとっては贅沢な食材の出番が増えています。金華豚はその代表です。
日本の豚肉っておいしいなあ、と思っています。それを意識したのは、30年以上前にイスラム圏であるエジプトでの生活を経験してから。イスラム教では豚肉食は禁止ですが、「とんかつや生姜焼きが食べたい」という欲求は抑えられません。そんな時は、1週間に1度だけ豚肉を売る、カイロの下町にある市場へと出かけたものです。ちなみに、カイロにはコプト教徒(エジプト独特のキリスト教徒)のために昔からこうした店があったのだとか。
そして市場からの帰路は塊肉を抱えて「晩ご飯は豚だ!」とウキウキ。居住させてもらっていた家のメイドさんは豚肉に触るのを嫌がり、不器用な私が切った肉の断面はギザギザ......。それでも、生姜焼きに感動にしたものです。
しかし、帰国したら豚肉の味は全く違っていました。やわらかくて「こんな味だったのか」と感心。別物でした。
イスラム圏の豚肉はやや特殊かもしれませんが、その後も、各地で豚肉料理に出会った結果、日本の豚肉こそ世界一ではないかと思うようになりました。しかも、年々、進歩していませんか。工夫を重ねて生み出されている、いろいろな銘柄豚を目にすると、日本人独特の高品質志向というか、職人気質を感じます。それに「おいしいものを食べたい!」という私たちの限りない情熱も......。
さて、金華豚は、中国原産の貴重な原種をベースに生まれたもで、飼育にはふつうの倍近い日数をかけるとか。なるほど、おいしいわけですね。目下、私にとってのナンバーワン豚肉なので、近所のお店で豚肉を買わずに、次の頒布を待っています。届いたら、ローストポークをつくろうかしら。あるいは塩豚にするか、煮豚かな、と迷いつつ待つのもまた良し、です。
(神尾あんず)
つるつる肌のホクホクじゃがいもの産地を訪ねる。 そこには、技術を駆使する生産者がいた。 間近に波が見...
極める気概と支える気質 「やっぱり、家のごはんがいちばんだね」 「うん、素材がいいから」 この...
今期の米づくりが、始まった。 山里の3人の生産者、それぞれの様子を取材した。 山肌を削って拓かれた、...
4月20日から約1カ月続いた一番茶の摘み取りを終え、その仕上げも全て終了。ようやく忙しさのピークが...