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※栽培途中のピオーネ

 近ごろ、スーパーの果物売り場でも、糖度表示をよく見かけるようになりました。確かに糖度はおいしさの目安です。しかし、糖度の高さだけではおいしさの尺度にならない、というのもまた事実。甘みを売りにした果物はいくらでもあるけれど、酸味、香り、風味など、いろいろな要素が揃ってこそ、本当のおいしさに出会えるものです。特に葡萄は、栽培する人の手間の掛け方と、技術の優劣によって、そのおいしさが大きく変わる果物。今年は比較的天候に恵まれている中、健菜屈指の葡萄名人、若林敏彦さんを取材しました。


絶好の立地に恵まれた葡萄畑

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※丘の上から甲府盆地を見下ろす

 若林さんの園地がある甲州市勝沼町は、甲府盆地の西に位置し、辺り一面が葡萄畑という名産地。丘陵の斜面から平地まで、見渡す限り葡萄棚が広がっています。ここは扇状地特有の水はけのよさに加え、昼夜の寒暖差が大きく、葡萄栽培にはこの上ない好立地。6月までの湿潤な気候と、7月からの強い陽射しが、味や香りを高めます。


まめな手入れが明暗を分ける

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※葡萄の出来を確認する若林氏
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※丁寧に葉を剪定し、光を取り込む。

 若林さんの葡萄畑は、標高500メートル前後の丘陵地で、南西向きの傾斜地に立地しています。そのため、日中はもちろん、日が傾き始めても西日を長く受けられる、最適の場所にあります。さらに、こまめに葉を努定し、園内に程よく光が入るように仕立てることで、棚の下はたっぷりと陽射しがこぼれます。丘の上から見ると、周囲のぶどう棚より緑の色が薄く、その違いは明らかです。 
「むやみに葉を刈り込んでしまうと栄養不足になるし、密集しすぎると、ブドウの実に光が届かない。その加減が難しいのです。でも、ちょうど良く手入れしてやれば、丈夫な樹になる。日照不足の年でも、力強い樹は甘く香りのよい実をつけてくれるんです。葡萄は病気が入りやすい果物ですが、私の畑では滅多に出ません。樹が健康であればこそですね」と若林さん。日頃の手入れが品質を大きく左右するのです。


とことん数を絞って栽培

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栽培途中のロザリオビアンコ

 若林さんのぶどうは、一房のなかで粒の大きさや列が揃っていて、玉並びがとてもきれいです。「粒が揃っているということは、それだけ均等に栄養が行き渡っているということ。見かけがいいだけじゃないんですよ」と若林さん。収穫量を絞って一房に栄養を凝縮させたうえで、実が小さいうちに、房を短めにカットします。だから房自体が短く小さめ。一房の重さの目安は600gになるのがいいと言います。「房が大きすぎると樹に負担がかかるし、味がぼやけておいしくなりません。短かければ、房全体が完熟の状態で収穫できるんです」
 ぶどうは光が当たる上の粒から早く熟し、最後に下の粒が熟します。房が長いと下が完熟するころには、上の粒が旬を過ぎてします。そのため、長さを短めにすることで、上下の差があまり出ないように調整するのです。本当はもう少し長い方が見た目も良いし、主流なのですが、若林さんのこだわりは変わりません。本当においしいものを作るために、欠かせない作業です。

今年も納得のいく品質を目指す

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※房の長さを短めに剪定する。
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※これからの天候が勝負。

 とはいえ、天候に左右されやすい果物ゆえ、気温や降雨量、日照によって毎年工夫することが必要だと、若林さんはいいます。甘くするだけなら簡単ですが、それでは健菜レベルには達しません。
「今年は最初から房を整えてしまわずに、予備の粒を残して栽培しています。様子を見ながら、最終的に品質のよい粒を残すやり方を試してみようと思います」
 さらに、収穫期の見極めも難しいところ。実を充実させるには、収穫を遅らせればいいのか、否か。味のバランスが一番いい時期は...?年によって変わる気候条件を見極める確かな目が必要です。生産者の技の見せどころです。
 今年はいまのところ天気がよく、夜温も下がっているので、色ののりはなかなかとのこと。若林さんは、甘いだけでない、納得のできる品質を目指しています。

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