師走、極月、氷月、極冬...。12月の和名は多い。
寒風を受け、眠るかのように里山は静まりかえる季。
12月は春待月ともいうそうだ。
8月の朝、籾が割れてちっぽけな花が咲く。開花は3時間だけ。
無風でも曇っていても受粉する。虫の助けも要らない。
地味だけど、稲の花は偉い。
稲が育ち、青々と連なる田んぼを青田という。
「でもね」と生産者。「濁った色はいけないよ」。
健康な葉の緑色は薄くて透明感がある。大賀集落の夏色だ。
棚田の景色は美しい。おいしい米が実る。
けれど、大型農機具が使えず、人の力が頼りだ。
特に草刈りは......。
急斜面や狭い畦で流した汗が、おいしさを育んでいく。
尾神岳の奥深く、水音をたどって源流へ。
ブナ林の地下から湧き出た水は、威勢のよい滝をつくっていた。
ザァザア、シャーシャー。枯れることない恵みの水だ。
畦塗り、田打ち、代掻きと春の大仕事が終わった。
とくとくと田んぼに水が注がれて、あとは時期を待つばかり。
田植えはいつに? お天道様と相談だ。
この年、大寒を迎えても田んぼは土色を見せていた。
豪雪の里での暖冬異変。このまま春の到来か......。
「雪なしの冬は冬じゃない」と里人はつぶやく。
雪の夜が明けた。空気は凜と澄み、畦は白く光る。
冬水たんぼは、雪片を浮かべている。
棚田の冬景色は目に眩しく、そして清々しい。