健菜米コシヒカリのふるさと、新潟県上越市吉川地区の風物詩をお伝えします。
山間の小さな田んぼで稲刈りが始まった。
風と水と虫の音の世界に、この日ばかりは機械音が響く。
カタカタゴトゴト...。秋空に収穫の音が刻まれてい
小さな稲の花が咲くのは朝。咲いているのは1〜2時間。
えいが開き、雄しべがするすると顔を出し、ちゃんと受粉する。
花びらはない。虫の力も借りない。「天晴れ」と言いたくなる。
棚田の形はまちまちだ。細長かったり、曲がっていたり。
だから早苗がくるりと丸いラインを描く田んぼもある。
でも、それは束の間、水面が稲葉に隠れるまでのことだ。
水を張り、土を砕き、混ぜ、平らにする代掻き作業。
刻々と西へと傾く太陽に急かされるが、焦りは禁物だ。
ゆっくり丁寧にトラクターを操作していく。
里山につらなる田んぼがきらきら光る。
水張り田んぼに空が、雲が、桜花が映っている。
そして、静かに田植えの時を待つ。
てん、てん、てん......、新雪に足跡の道ができていた。
「これは野ウサギだね」と棚田の主。
深雪の上で跳ねながら、おいしいエサは見つかったか。
収穫後に土を耕し、水をはり、冬を待つ。
春を迎える準備を終えた棚田は、やがて雪に隠れてしまう。
その下で、土壌微生物や昆虫が、命をつないでいく。