昔は手刈りした稲を、はさにかけて天日に干した。
太陽と風にたのんだ最後の仕上げ。
復活した昔のやり方で、懐かしい味がよみがえる。
刈り入れは、働きもののコンバインが頼り。
欠かせないのは、くるくる働く集落の仲間。
かけ声ひとつ要らない。50年を超える付き合いだ。
9月、稲葉は草色から黄金色に変わっていく。
葉から抜けた緑は養分となって籾を満たす。
完熟まではあとわずか。 田が黄金色であふれる頃に収穫だ
田んぼの泥の中で冬を越し、
早苗の間で春を過ごしたヤゴは、
朝露に濡れながら、透明の羽を広げる。
さあ、旅立ちだ。夏の空が待っている。
影を伴い、ひっそりと狩りをする青鷺一羽。
田んぼの水は命の宝庫。獲物には事欠くまい。
静寂の中、蕪村の一句を口ずさむ。
「夕風や水青鷺の脛はぎをうつ」
小さな田んぼには、小さな田植機。
隙間は残さないよ、と、くるくる。
むだな動きもしないさ、と、すいすい。
米作り名人は、名ドライバーでもありました。
春浅い田に現れたのは、越冬の水だ。
稲刈り後の田を干さず、 水を貯めて春に備える古来の農法。
水が温むと生き物がいっせいに目覚める。
今年の米作りが始まるのは間もなくだ。
春は土から 春はどこからやってくる?
見上げれば光る風きらきら。
山は赤く染まって芽吹きを待つ。
そして足もと。
小さな命が春を喜ぶ。
雪の一夜が明けた朝、
「もうこんなに」と屋根の雪を見て、ため息一つ。
今日も雪かきから一日が始まる
「春はまだか」と、また、ため息が出る
雪の下に道がある。
雪の下に地蔵もかくれている。
雪の下に田んぼもある。
そこには水がうもれている。
たくさんの生き物がいる。
みんな春を待っている。