収穫の時を待つ 健菜米の生産者を訪ねて

健菜米コシヒカリは上越市吉川区で栽培されている。 永田農法による米づくり30年になるベテランばかりだ。

 健菜米コシヒカリの産地を訪れた9月半ば、大賀集落の中村昭一さんの棚田に集まった生産者の表情は、みな晴れやかだった。
 「いい感じだね」と稲の姿をほめる生産者もいれば、2週間ぶりの快晴に顔がほころんでいる人もいる。太陽がいつ顔を出してくれるかと、それまで気を揉んでいたのかもしれない。
 じつは、取材チームにも不安があった。それは、この棚田に通じる道路のいたるところで、秋の長雨の影響で稲が倒れ、渦巻いている様子を目にしていたからだ。
 しかし、到着してみると、健菜米の稲はスクッと立ち、光のベールをかぶっていた。生育は遅れていたが、その黄金色の美しさは、豊かな実りを約束しているように見える。

小さくて硬い稲

「豊作で品質も申し分ないでしょう」
 そう話すのは、永田米研究会会長の山本秀一さんだ。研究会では、10日前に健菜米の田んぼを巡回し、状態をチェックしていた。この時期に健菜米として収穫できるか否かを判断するのが会の決まり。その結果、今年はどの田んぼも「合格!」と太鼓判が押せて、「ホッとしました」という。
 近年は、異常ともいえる気象が当たり前になり、その対応に苦慮している。今年も例外ではなかった。
「けれど、健菜米は健全に育ってくれました」

 その最大の理由は、肥料を控え、コンパクトで頑丈な稲を育てているからに他ならない。
「永田農法の稲は人間に例えると小柄で筋肉質、無駄な贅肉がありません。多少のことでは倒れません」
 山本さんはそう言うと、稲をすっとつかんだ。
「ほら硬くて、シャキシャキと金属音がするでしょう」と。
 どうやら肥料が多い慣行栽培の稲は、つかむとやわやわしているらしい。
「比べて見ると、茎や葉はコンパクトなだけでなく、色も違います。そして健康な稲は働き者でもあるんです」
 健康な稲の葉は濁りのない薄緑色だ。それが登熟期の今、穂に近い3枚の葉がせっせと光合成をして、養分を籾の中に送り込んでいる。そして、養分のすべてを無駄なく実(米)に送り込むと、緑色が抜けて澄んだ黄金色へと変化していく。
「ゆっくりとね」と中村さんはいう。そして、この過程で米はよりおいしさを高めていく。

その1日を逃さずに

 この日は、山本秀一さんと前永田米研究会会長・中嶋巌さんの田んぼも訪ねた。どちらも豊かな実りを約束していた。
 「長くもなく短くもなくちょうどいい長さ」と山本さんがいう稲穂の籾を取り、割ってみる。穂元の米粒はまだ青く細長い。一方、穂先の熟度が進んだ米はふっくらと丸く、透明だった。米の検査官は、今年の健菜米はその丸みが顕著だと感心しているという。それが食味とどう関係するか、期待せずにいられない。

 さて、生産者にとって残る課題は適期を見極めて、収穫をすることだ。この日、山本さんは自分の田んぼの収穫開始日を「5日後ぐらい」と予想していた。中嶋さんは「10日後ぐらいかね」、中村さんは「2週間後」だという。収穫は1日早くても、逆に遅れても収穫量や品質に差が出る。適期は逃せない。その日、すぐに作業が始められるように、3人は稲の間の雑草を抜き、畦の草刈りを終えていた。
 本紙が発行される頃には、健菜米コシヒカリの収穫が終わり、新米が出荷の時を待っている。

収獲前の稲姿を比較

【上】
慣行栽培のコシヒカリ
多肥料で茎が伸長した稲。今年は夏の日照不足や秋の長雨の影響で倒伏してしまった。葉は養分を籾の中に送り込めず、未熟な米を収穫せざるを得ない。

【下】
永田農法栽培のコシヒカリ
茎の節と節の間が短く、穂も長すぎず、葉もコンパクト。窒素肥料を控えているので緑色が薄い。葉は活発に光合成を行い、米は順調に登熟中。

特設ページを御覧ください。


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