取材に訪れた昨年の3月半ば、愛知県豊川市の農園では、春キャベツの収穫が始まっていた。
畝の間を歩く女性たちが、収穫するキャベツを選んで、手早く株元に包丁を入れていく。そしてバリバリとした大きな外葉を切り払うと、「はい!」と声をかけ、キャベツを宙に投げる。宙を飛んだキャベツは、捕手役の女性の手元に吸い付くように収まり、次々に箱詰めされていった。かなり体力の要る作業だが、女性たちの動きは無駄なく、手早い。阿吽の呼吸だ。
「どうやって収穫する玉を選んでいるんですか〜」
畑の脇から、大声で女性たちに聞いてみた。
「かた............」
女性の返事は強い春風でかき消されて、聞き取れない。
牧内さんのキャベツ・白菜の栽培歴は25年。自分の農園だけでなく、多くの畑の管理を任されているだけに、経験も知識も豊富だ。それぞれの畑の土壌や気候条件によって、管理は細かく調整しているが、共通していることがある。それは肥料を抑えること。
「25年前から化成肥料は使っていません」
有機肥料を使い、健全な土をつくってきたのは、安心安全はもちろん、「味が違ってきますから」と言い切る。
その味の違いは、冬キャベツより春キャベツのほうが際立つと牧内さんは言う。春キャベツは、生で食べることが多いからだ。
「みずみずしくて、食感も香りもいい」
これから届く春キャベツは、春の陽射しが強くなるにつれて、品種が変わり、歯触りも変化する。そしておいしさを増していく。今年も楽しみに待ちたい。
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