荒ぶる気候に負けない。 健菜米づくり、始まる。

今年も健菜米づくりが始まった。
さらにおいしく!と生産者は口をそろえている。

上越市吉川区では今年も健菜米コシヒカリの栽培が始まった。大賀集落の棚田を訪れたのは、田植えからほぼ1週間後の6月3日。風にそよぐ苗の葉はまだ細く小さくて、田水は空を映す鏡のようだった。
 その水に目を凝らせば、今春、孵化したばかりのメダカが群れをなしている。体長1センチに満たない子メダカが集まっては散る情景は、なつかしい唱歌のままだ。
 絶滅危惧種であるメダカが元気に泳ぐ棚田を、生産者たちは目を細めて見ていた。
 その棚田の前で永田米研究会会長・山本秀一さん、中村昭一さん、中村高二さんの3人に話を聞いた。

異常気象に備えて

Q 健菜米の田植えは無事に終了したようですね。

山本 はい。永田米研究会では、周囲の慣行栽培の田んぼより、3週間ほど遅く田植えをしました。これは気候の温暖化に対処する方法の一つ。以前の農業暦に従って田植えをすると、稲の登熟期と暑さのピークが重なって、稲に大きな負担がかかり、米の品質が下がってしまいます。そこで、遅植えによって、出穂・開花の時期を遅らせ、気温が下がるお盆すぎから、稲がゆっくりと熟していけるようにしています。今年は、5月から夏日が続くなど、温暖化がますます進行していると感じます。

Q 昨年は水不足に苦しみましたね。

山本 その影響で、収穫量がかなり減りました。ただし、食味は例年のレベルに達してホッとしました。
中村(昭) 毎年のように、「昨年以上の品質に」と高みを目指していますが、天候は味方してくれるばかりではありません。人の力には限りがあるという謙虚さを忘れず、その上で、できることに全力を傾ける、それが私たちの農業です。

Q 今夏は天候不順の可能性大と気象庁は予想しています。

山本 「荒ぶる気候」という言い方があるほど、気象変動は大きくて、予想がつかなくなっています。これまで以上に天候に気を配り、稲の変化に敏感に対処していかなければなりません。その基本は永田農法の教えを守ること。無肥料に近い状態で栽培し、土にたくましく根を張り、コンパクトでありながら壮健な稲を育てることが第一です。自分の力で直立し続けることができる稲です。

変わらない姿勢

Q 生産者に変化はありまか?

中村(昭) 高齢化は進んでいますが、農業は60歳、70歳からがますます面白い。こだわりぬいた米づくりには私たちぐらいがちょうど良いのです。吉川全体で見ると、耕作放棄地が増えて寂しい限りですが、健菜米の田んぼは草刈りが行き届き、整然として美しいですよ。

Q 最近は、新品種が次々登場していますが......。

山本 コシヒカリを超える品種はまだありません。米の品種改良は、温暖化対策や作業の効率化、多収量化を目的としたものが多く、おいしさの追及はむしろ後退しています。だから、私たちは、ぶれることなく、味の追求ができ、本当に美味しいと思っていただけるコシヒカリをつくり続けます。

Q 最後に、今年の抱負を教えて下さい。

山本 「よりおいしく」が抱負であり、目標です。今年から、土壌中の微生物の活動をさらに活発にして、稲のりん酸吸収を高める土づくりを始めました。
中村(高) 山本さんと昭一さんが試してきた土づくりを、今年は生産者全員が取り入れました。結果が楽しみです。
山本 永田米研究会メンバー全員のレベルを上げることが課題です。それぞれが工夫を凝らして米づくりをしてきましが、情報を共有して、全員で高みを目指したいと思います。6月30日には、全員ですべての田んぼの生育調査を行い、米づくりの中盤戦に備えます。

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