昔のかしわの味がする?
鶏肉が大好きです。私にとっては高級霜降り和牛より、健菜駿河若シャモのほうがはるかに美味。
味がしっかりしている地鶏なので、塩を振っただけのグリル焼き、あっさりとした蒸し鶏、シンプルな下味の唐揚げ、それに...と、「おいしいね」と言ってもらえる料理を挙げるときりがありません。
今の季節は、「今晩は何にしようかな」と迷ったら、水炊きに落ち着きます。わが家では、魚介を加えず、鶏肉と野菜だけの鍋が好みです。だしは、昆布だしもよいのですが、博多風に鶏ガラのだしを使うと旨みが濃厚になり、肉のよさを引き出してくれるように思います。
だから、健菜倶楽部が鶏ガラや手羽先をサービスにつけてくれるのは大歓迎。時間があるときに、コトコトと煮込んでスープを取り、小分けして冷凍保存しています。
じつは、鶏肉が大好きな私ですが、食指が動かない時期がありました。それは、しばらくエジプトで生活をして帰国した後のこと。25年も昔のことで、エジプトでは、市場で生きた鶏を買い、自宅のキッチンでメイドさんにさばいてもらっていました。
その鶏は、小さくやせていて、1羽さばいても、たいした量にはなりません。肉質も硬くて、エジプト生活中は、それが特別なものだと思ってはいませんでした。
ところが、帰国して驚きました。あちらのほうが日本よりずっとおいしいではありませんか。
日本のものは脂肪が多いことにも参りました。その脂肪の匂いも、弾力のなさも気に入りません。あの頃のスーパーで売られていた鶏肉は、ドリップが肉から浸みだしているものが多く、肝心の旨みが抜けていたのかもしれません。
父母が「昔のかしわは味が違う」と言っていましたが、「なるほど、このことなのか」と納得したものです。
しばらくは、スーパーの鶏肉をなるべく買わず、ときどきデパ地下の専門店で地鶏を買っていました。
ですから、健菜倶楽部が鶏肉を頒布すると聞いたときは、「おお、ありがたい!」と思ったものです。
実際に、最初に健菜駿河若シャモを食べた時は「ああ、この味だ!」と、エジプトの鶏肉を懐かしく思い出しました。脂肪が少なくて、旨みあり、臭みがなくて、歯応えがしっかりしています。
でも、じつはすぐに「そもそも、エジプトの鶏肉はこれほどいい味だったかな」と疑問がわきました。もし、あの頃のエジプトの鶏肉を食べる機会があったら、「健菜の鶏肉のほうがおいしい」と思うのではないでしょうか。
昔の味がするのではなくて、美化しがちな舌の記憶を覆す、昔以上の味がする肉だ、と今は感じています。
(ライター・神尾あんず)
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