そばにうるさい人が多いのは、昔からのことですが、最近は「うどん談義」もこと欠きません。友人の一人は、讃岐や水沢にわざわざ出かけては、「こしが...」と楽しそうに語ります。
すると「わたしは稲庭が好き」とか、「伊勢うどんが話題よ」という人があらわれるもの。
けれど、さすがに「上越市吉川の生うどん」について語るうどん通には、会ったことがありません。知る人ぞ知るどころか、健菜倶楽部のメンバーしか知らない秘密のうどんですから。
それにしても通がこのうどんを食べたら、何と言うかしら。
「この歯触りはなに? この味はどうして?」と不思議がったら、その味覚はかなり本格的かもしれません。
うどんは本来、小麦粉と塩、水だけで作るもの。こねてのばして、グルテンができるから、つなぎは要りません。でも、健菜の「生うどん」には、隠し味に山芋が練り込まれています。そばならともかく、うどんにつなぎ。ちょっと掟やぶりです。
そのために、味には小麦粉だけでは味わえない独特の旨みがあって、口元をつるつるとよくすべるのに、噛むともちもちとした食感が味わえる。こしが強い、といううどんとはちょっと違います。だからといって、こしがないわけでもありません。食べ応えがあり、食べやすい。
こしが強いうどんが苦手な夫は、この独特の食感をとても好みます。
最近は、東京に居ながら、各地からおいしいうどんを取り寄せできますが、あれこれ試して、わが家はまた、このうどんに戻ってきています。
特に夏、冷たいうどんというとこれ。食欲がない時でも、さっぱりとおいしくいただけます。そうめんより、食べた時の満足感が大きいのも魅力です。
昨年の夏、友だちが集まった時の昼食は、冷たいうどんをど〜んと出して、薬味をいろいろ並べてみました。これは、とても好評でした。中には、「このうどん、香ばしいね」と感想を言っていた人がいます。
うどんがいいと、それだけでごちそうになるものですね。
では、冬はどうかというと、わが家では、よその人に見せられない食べ方をしています。テーブルにコンロをおいて、なべでうどんをグツグツ。そこから直に箸でお椀にとり、だいこんおろしとお醤油でいただくというもの。だしではなく、お醤油がいいのです。
料理名は、勝手に名付けた「ずりずりうどん」。昔、禅寺の僧侶が何かに書いていた食べ方です。健菜の生うどんでこれをすると、何杯でもいただけます。おいしいです。
健菜の生うどんは、知っている人が少なくて、うどん談義の俎上に登場させられないのは少し残念です。
でも有名になったのはいいけれど、大量生産で味が落ちてしまってはもっと残念。これまでのように、少量ずつ、ていねいに製造し続けて、知る人ぞ知る「秘密のうどん」のままのほうがいいのかもしれません。
この味、守り通して欲しいと思います。
(神尾あんず)
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