変わらない美味

 初めて健菜の自然薯を取り寄せてから、20年以上になります。最初は、それまでは無理だと言われていた自然薯の栽培に成功したことが気になり注文。そして届いたパッケージの大きさに驚き(竹刀でも送られてきたのかしら!と)、さらに中から現れた自然薯の立派な姿に目を見張りました。
 何たる存在感!
 予想していたひょろひょろと細く、ひしゃげた姿とは、ずいぶん違っていました。

イベントの主役

 それ以上に予想外だったのは、味でした。粘りは、これでもかというくらい強いのに、味はエグミがなくて、旨みがしっかり。その風味は天然物並というより、むしろ越えているかも、とすら私には思えました。
 このとろろ汁をかけると、ご飯が進む、進む。箸が止まりません。
 そこで翌年から、この自然薯が届くのを待って、友人家族を誘い、「自然薯食事会」を開くことにしたのです。
 大きなすり鉢で、自然薯をごりごりと擂るのは、夫たちの担当でした。
 子どもたちは、トッピング用の海苔を刻んだり、焼鮭を細かくほぐしたり......。とろろを伸ばす出汁は、定番ばかりではなく、「今年はこれで!」と鶏ガラスープや味噌味を試すなど、食事の準備からがイベントです。圧倒的な存在感をもつ自然薯ありきの、賑やかで楽しい食事会でした。
 さて、年月を経て子どもたちは独立。家族同士で集まる機会もめっきり減りました。コロナ禍で簡単な食事会も見合わせ状態が続いています。そろそろ、再開してもいいのかな。

思い出を副菜に

 子連れで集まった頃の賑やかさはないけれど、大人だけのゆっくりした自然薯食事会も悪くありません。昔、何膳もおかわりした子は結婚したそうです。丁寧すぎる包丁づかいで海苔を針のように切っていた子は海外留学中だとか。食事会は、彼らの思い出話になるのでしょう。それが副菜かな。
 私たちの暮らしは変わってきたけれど、自然薯の堂々たる姿やおいしさは20年前と同じですね。
(神尾あんず)


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