おいしい卵のモトを探る
健菜通信:今月の特集

おいしい卵のモトを探る

2012年04月01日
「高知県土佐清水市、佐々木貞壽さんを訪ねる」
昨年3月から、卵の産地が高知県に変わり、健菜たまごの礎を築いた、佐々木貞壽さんの養鶏場からお届けしています。

 完全植物性飼料で育てられる健莱たまごは、白身が透明で、嫌な臭いがまったくせず、卵かけごはんがごちそうになると、多くの方から高い評価をいただいている。

 健菜たまごが生まれたのは二十数年前。その誕生に深く関わったのが、高知県四万十町の養鶏家・佐々木貞壽さん、その人だ。

 その頃、佐々木さんは知人から「子どもがアレルギーで卵が食べられない」という話を度々聞かされていたという。養鶏に携わる者として「何とかアレルギーを起こさない卵を作りたい」との思いから、独自に研究を始めていた。

 原因は餌にあると直感した佐々木さんは、飼料の配合を試行錯誤し、あるレベルまでは達していたが、どうしてもその先へ進めず、行き詰まっていた。そんな時に出会ったのが、健莱の特別顧問・永田照喜治氏だった。

完全植物性の飼料を目指して

 実は、永田氏も、卵アレルギーの原因として母鶏の餌に注目し、スウェーデンの生理学者C・E・ダニエルソン教授の論文にたどり着いていた。そして佐々木さんと共に、食の安全の最先端を走っていた、ストックホルム生協の養鶏場を視察したのだ。

 母鶏にたくさん産卵させるためには、高タンパクの飼料がよいとされているのだが、当時四万+川町清涜。麹舎のそばにも主琉が量れる。手に入る配合飼料は、産卵効率を重視して動物性タンパク質の「魚粉(主にカタクチイ?と」が大量に配合されていた。ところが、動物性タンパク質は、もともと鶏の餌として不適格な上、魚粉の鮮度が悪いと脂肪分が酸化して母鶏と卵の健康を損ね、その結果、子どものアレルギーにつながっていると、ダニエルソン教授の論文にはある。

 視察を終えた佐々木さんは完全植物性飼料の開発を心に決めて帰国。永田氏の協力を得て餌の研究を進めた。

「鶏も人間も、食べ物に関しては同じ。人が食べられないような餌を与えてはだめなんです」と佐々木さん。

 当時の日本の養鶏飼料には、魚粉だけでなく、豚や牛、鶏などの骨・内臓・皮・羽を一緒くたに発酵、粉末化させたものが混ざっていたという。それを人が食べられるかと考えると答えはもちろんノI。およそ安全な食べ物だとは思えない。

 佐々木さんは動物性タンパク質をすべて植物性に切り換えた。遺伝子非組み換えの大豆やとうもろこしを中心に配合し、さらに鶏の体質改善にと、永田氏が勧める緑茶パウダーを加えたのだ。しかしその試みは、最初から成功したわけではない。緑茶パウダーに含まれるカテキンの殺菌作用が強すぎると、鶏が弱ってしまうのだ。

「カテキンが腸の善玉菌まで殺してしまっていたのです。それから数か月、配合量を調整して、基本の餌が出来上がりました」

 そのレシピをもとに、飼料会社に基礎飼料作りを依頼。さらに独自の飼料をプラスするなどして納得の行く品質になるまでに、実に3年の月日が経っていた。

健やかな環境作り

 佐々木さんの鶏舎は、四万十川と土佐湾にはさまれた山間の小さな集落にある。風がよく吹き抜ける鶏舎では現在、2万5千羽の鶏を飼育しているが、嫌な臭いがせず、清潔そのものだ。

「鶏の品種も鶏舎のシステムも、北目に比べれば格段によくなっています。ただ鶏の飼育を管理するだけなら、今の3倍の規模でもできるでしょう。でも鶏の顔を見て、健康から機嫌の良し悪しまで把握するには、今の数が限界ですね」と佐々木さん。

 また、ここでは暑さに弱い鶏のため、夏になると定期的にミストを噴霧し、室温を下げる。ストレスのない快適な環境を保つためだ。そして、鶏に飲ませる水の水質に気を配り、鶏舎を消毒し、3か月に一度は血液検査をして、病気やサルモネラ菌などを厳しくチェックしている。

 こうして健康な母鶏から生まれた健莱たまごは、黄身が丸く盛り上がり、白身はダレていない。濁りのない透明感は、他の卵と比べると歴然だ。生臭さがなく濃厚なその味わいは、食べる度に「やっぱり旨い」と領きたくなる。

 アレルギーの子どもたちのために、と研究し続けてきた卵が、純粋においしいと評価されるのは、つれしいと佐々木さんは顔をほころばす。

「これで一歩『本物』に近づけたと思います」と喜ぶが、正直なところを言えば、飼料代がかさむ健莱たまごだけでは、経営的に厳しくて食べてはいけないのが現状だと言う。

「本当に喜んでくれる卵を作りたいと思ったら、儲けのことなんて一一の次と言いたいですけれどね」と笑う。

「本物」を求め続ける

 佐々木さんの求める「本物」の卵は・・・?という質問をすると、「うまくは表現できないのですが・:」と前置きをして、語ってくれた。

「今後、人口の増加によって、世界的に穀物が値上がりすると思います。飼料も同様。だから、より効率的に栄養を吸収させることが求められてくるでしょう。今はまだ試行錯誤中ですが、微生物や酵母、乳酸菌を利用して、鶏の体質をよくする方向性を探っています」

 たとえば黄身の色を際だたせるため、一般にはマリ1ゴールドや赤ピーマンを餌に加えるのだが、佐々木さんは赤ピーマンを発酵させたものを取り入れている。

 色を出す目的だけでなく、発酵食品により、鶏の体の機能を高め、また一歩おいしさを高めていこうと考えているのだ。

 まだ手探りだが、佐々木さんの「本物」を追求する手は止まらない。さらに進化していく健菜たまごが、私たちも楽しみでならない。



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