ふかふかの土が おいしいきゅうりの根を育てる
健菜通信:今月の特集

ふかふかの土が おいしいきゅうりの根を育てる

2013年10月01日
南国宮崎にも、秋の訪れ。昨年秋に訪れた、宮崎県宮崎市のきゅうり農家のレポートを、時期を待ってお届けします。

 宮崎は、温暖な気候で年間の降水量は多いのですが、冬は晴天率が高く、農業には絶好の場所。健菜きゅうりの生産者・永野正純さんは、そんな宮崎県の南部、宮崎市佐土原町で、高品質のきゅうりを栽培する名人です。
 農園にうかがうと、きゅうりのハウスより前に、目につく大きな建物がありました。それは、数頭の牛がくらす牛舎。永野さんは、有名な畜産家でもあるのです。
 野菜づくり同様、宮崎は畜産が盛んなことでも知られていますが、永野さんは畜産ときゅうり栽培を両立させる農家です。畜産といっても、高級肉牛の親となる牛を繁殖させる繁殖農家で、畜産に携わる人ならだれもが知る伝説の種牛「安平」の育ての親として有名な人物です。

信頼できる自家製堆肥

 永野さんのきゅうり栽培は、その畜産とは切っても切れない関係にあります。それは、完熟させた自家製牛フン堆肥を使った農業を行っているからです。
「一から自分で作る肥料だから、これほど信頼できるものはありません」と永野さん。
 永野さんは、じっくりと時間をかけ、完全に微生物が分解し、しっかり発酵した完熟の堆肥を作ります。牛が食べる牧草から自分で栽培するのですから、その品質には、スミからスミまで目が届いています。
 きゅうり栽培をはじめたのは畜産と同時期、およそ40年前。永野さんはまだ20代前半のことでした。

「駆け出しで不安定だった畜産と並行して、なんとか定期的な収入も得なくてはなりませんでしたから、比較的狭い面積ではじめられたきゅうり栽培を選びました。堆肥は十分あったし、ハウスで作ればしっかりいいものができるだろうと...」
 その後、妻のカズエさんと結婚し、畜産も農業も二人三脚になりました。
「最初のうちは、どうしたらいいきゅうりができるか、二人でよく研究しましたね。曲がった小さいきゅうりに洗濯バサミで印をつけて、形がどう変わるかを観察したり。楽しかったわねえ」と、カズエさんは懐かしそうに当時を振り返ります。
 よく、曲がったきゅうりも味はいっしょといいますが、曲がったものばかりの苗は、栄養バランスがくずれていたり、生育不良だったりと、やはり何らかの原因があるもの。

 ただ、健康な苗なら、小さいうちに曲がっていても、成長するにつれまっすぐになるものもあり、どれを摘果するかを的確に見極めなくてはなりません。
「肥料がよかったからか、最初は曲がっていても、たいがいまっすぐ育ったわね。でもどうしても少しは曲がるのも出てきてしまう。そんなのは早めに摘んで、樹に負担をかけないようにしています」
「きゅうりは、一晩でキュッスッと太るのがいいんだよ。へんに時間がかかると変形してしまうんだ」

ふかふかの土が根を育てる

 研究熱心なお二人と話しながら、ハウスに足を踏み入れます。自家製の堆肥をすき込んだ土は、ふかふかのじゅうたんのような不思議な感覚。いやなにおいは一切ありません。
「きゅうりは、トマトなどに比べると根が少ないから、根を大切に育てなくてはなりません。このふかふかの土は、空気をたくさん含んでいて、根がいつでも呼吸できるように工夫されています」と正純さん。

 一般的にハウスの土は、シーズンも終わり頃になると、踏み固められてカチカチになるそうですが、ここでは最後までふかふかのまま。だから、ずっと同じように酸素が供給され、根が呼吸すると同時に、微生物もしっかりと活動し、土の環境を保ってくれるのです。
「追肥はほとんどしません。うちの堆肥はゆっくり長く効くので、液肥で補いつつ、栽培しています」
 適度な水加減で葉を小さく厚めに育て、ハウスの中が暗くならないよう管理し、しっかり光合成させています。

歯ごたえのよいブルームきゅうり

 健菜ではおなじみですが、永野さんのきゅうりは、今では貴重なブルームきゅうり。きゅうり自身が乾燥から身を守るため、白い粉状のワックスを出し、柔らかい外皮を守っています。
「以前はこの粉を農薬とまちがえる人がいて嫌がられたものですが、やはり、こちらのほうがだんぜんおいしい。うちでは、台木に黒種という昔ながらの苗を使っています」
 皮は柔らかいのにハリがあって、とにかく歯ごたえがよい永野さんのきゅうり。かじると、ウリ科独特の爽やかな香りが、ふんわりやさしくただよいます。
 10月は苗を定植して、つるを誘引したり、草むしりをしたりと、やることがいっぱいの月。
「草むしりはきちんとしておかないと、病害虫が心配ですからね。これはほとんど私の仕事。いいものを育てているから、仕事は楽しいですよ。牛もかわいいし、きゅうりはおいしいし、40年続けても飽きないわね!」とカズエさん。
 出荷は、味のピークを迎える1月ごろから5月の上旬くらいまで。しばらく時間がありますが、楽しみにお待ちください。

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