深化する農法 自然と向き合う吉川の米作り

今年も新潟県上越市吉川で、健菜米コシヒカリが育っている。 生産者は永田農法を熟知するベテラン揃い。けれど自然との付き合い方は毎年変わる。「今年も1年生」といいつつ、おいしい米をつくる。

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尾神岳中腹から見た5月下旬の吉川。水鏡のように輝くのが健菜米コシヒカリの田んぼ。


 吉川の景色は美しい。なかでも、棚田が水鏡になり、山の緑を映し、太陽の光を反射する田植えの季節は、ひとしおだ。
 健菜米の栽培が始まった25年前、この絶景が見られるのは、4月末から5月にかけてだった。
 けれど今は、3週遅れだ。気候の温暖化に合わせて、田植え時期を遅らせてきたからだ。この新しい農業暦とともに、健菜米は栽培されていく。

稲はすこぶる順調

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毎日、田んぼを見て歩く、中村昭一さん。


 中村昭一さんは、4月25日にコシヒカリの種を撒き、苗作りを始めた。水につけてふっくらと鳩胸状になった種籾を植えていく。
 「苗半作」という言葉どおり、育苗は秋の稔りを大きく左右する。生産者は苗作りにも「永田農法式がある」という。それは、苗の根を横に張るように、葉も茎も太くて短くし、水を欲しがるくせを苗につけさせない等々...。列挙すると限りがないが、基本は温度と水を管理しながら、引き締まった苗をつくる。この基本が、育苗から収穫時まで貫かれて、健菜米の特別なおいしさは育くまれる。

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浸水して膨らんだ種。これを蒔き、苗をつくる。

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健菜米の苗。背丈は低く、根の数が多い。


 今年の育苗は、すこぶる順調だった。そして5月下旬からは、田植えが行われたのである。じつは、田植え前も後も、雨が降らずに、水不足が心配されていたが、永田農法の苗はもちこたえた。それどころか逆に、水が少なく、晴天が続いたおかげで、茎の背丈が低く、茎が太く丈夫に育ち、稲は、完璧といいたいほどの状態で、7月の中干しの時期を迎えたのである。

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中干しの準備をする中村昭一さん。


 中干しとは、田んぼの水を抜き、土を乾かすこと。こうすることで、根に酸素を与え、発根を促進する。その後は、田に水を入れたり、抜いたりを繰り返しながら、稲が充実した実を結ぶのにもっとも適した状況をつくりだしていく。技の見せ所だ。「今年は、いい米ができる」といった声が上がりはじめて、生産者たちの会話も朗らかにはずむ。中村さんは言う。

 「永田農法は奥が深い。永田照喜治先生がぽろりと漏らす一言には、米作りの真髄につながるヒントがかくれている」
 25年続けてきても、発見があり進歩がある。

永田農法の基本と応用

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 健菜米づくりには、生産者の頭に刻まれている一種のマニュアルがある。それは「無窒素肥料米の栽培方法」と記された、永田照喜治による特許取得申請書(特許取得済み)だ。
 内容は、シンプルだ。第一は、有機肥料も化学肥料も全く使わないこと。これは米作の常識を外れている。第二は、珪酸カリなどからなる発根促進剤を使うこと。それも、ごく少量を地表面や葉面に散布する。これも、これまで全く知られていない方法だった。その結果、地表近くの根が繁茂し、地中深くへ向かってのびる直根が消滅する。たくましい直根を見ると「植物の元気がいい」と判断しがちだが、稲の背丈をひょろひょろと高くして、病害虫に弱くし、味も悪くする原因になる。
 一方、細かい根に働いてもらうと、稲の茎は引き締まり、固く太くなる。米粒には栄養とうまみが凝縮して、雑味(たんぱく質に由来する)はなくなる。

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8月、稲の花は数時間だけ開花する。



ところで、この内容を知っていれば、健菜米はつくれるだろうか。

 答えはノーだ。書類に書かれているのは栽培方法のごく一部。それを読み解き応用する力がないと、実践はできない。
 それに吉川には、稲が好む独特の土壌がある。稲にむだなく栄養を与え、根の発達をうながす粘土質の土壌だ。尾神岳を水源とする名水が、川となって流れてもいる。そして、それぞれの生産者が、環境にあった独自の工夫を加えてこそ、米のおいしさを高められる。
  永田農法はこの地で、深化してきた。今、生産者たちは草刈りに汗を流している。除草剤に頼らず、繰り返し草を刈るのは重労働だ。でも、やるべきことを全て積み重ねてこそ、おいしさを極めることができる。生産者たちはそれを知っている。8月には稲の花が咲き、いよいよ結実が始まる。流した汗も実を結ぶ。

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健菜米コシヒカリの新米は、10月からお届けが始まります。
■価格:5キロコース(1回6,253円)、2キロコース(1回2,700円)
■送料:1回1,080円
■精白米・無洗米・玄米・5分搗き・7分搗きの各精米方法を選べます。
健菜米コシヒカリの詳しい内容はこちらのページをご覧ください。

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