健菜通信:今月の特集

高原生まれの純白ミルクは 味は濃いのに後味さっぱり

2015年09月01日
ジャージー牛から搾った純白のミルク。
今春、健菜倶楽部を代表する味が4年ぶりに甦りました。
そのおいしさが生まれる牧場の様子をお知らせします。

 標高1915メートルの茶臼岳を主峰に、朝日岳、三本槍岳などの山々が連なる那須連山の姿は雄大でのびやかだ。その山裾に展開する那須高原は、御用邸などもあり、昔から避暑地として都会の人を引きつけてきた。
 清涼な空気と緑豊かな自然...。その中に身を置くと、五感が開放されて心が晴れやかになっていく。

ストレスのない環境でのんびりと

 そんな那須高原で、健菜ジャージー牛乳は生産されている。
「牛たちにストレスのない、気持ちがよい環境にいてもらうことが、おいしい牛乳のためには大切ですね」
 那須牧場の小泉忠邦さんは、そう言いながら広々とした牛舎を案内してくれた。全開の窓から涼しい風が吹き抜けていく。緑の香りをのせた高原特有の風だ。牛舎内部は清潔で、家畜臭がほとんどしないことに驚かされる。

 現在、飼育されているジャージー牛は110頭あまり。取材のときは、朝の搾乳を終えて、のんびりとエサを噛んでいた。ブラッシングを受けながら、気持ちよさげに目を細めている牛もいる。
 ジャージー牛は気立てがやさしく人なつこい。彼らは見知らぬ人間(つまり私たち)に気づくと、興味津々という表情を見せ、なかには額をすり寄せてくる牛までいる。その目はくりくりとして愛くるしい。

「バンビみたいでしょう」
 こちらの感想より先に小泉さんがこう発言したのは、初めてジャージー牛を見るとこんな言葉をもらす人が多いからだろう。
 ジャージー牛は、イギリス海峡の小島ジャージー島で飼育されていた乳牛だ。日本には明治時代と戦後間もなく原種が輸入されて、飼育されることとなった。しかし、ホルスタインに比べると体の大きさは3分の2程度で、搾乳量も2分の1から3分の2程度しかないため、牛乳メーカーに歓迎されず、飼育数は漸減。現在は、全国の乳牛数の0・7%程度しかいないという。希少な牛種だ。
 しかし、那須牧場では、40余年前の牧場開設当初から一貫してジャージー牛を飼い、自家繁殖させてきた。

日本一のおいしさを目標に

 なぜ、ジャージー牛を選んだのだろうか。
「理由は先輩たちが、日本一の牛乳を作ろうとしたからだと聞いています」
 そう説明するのは、現在の牧場長の深澤昭さんである。
 もともとジャージー乳は、乳質が濃厚で、乳脂肪分が4・5%以上あり(ホルスタイン乳は3%前後)、さらに無脂乳固形分率(タンパク質や、カルシュウムなどのミネラル)も9%前後とホルスタイン乳よりかなり高い。つまり味が濃厚で栄養価も高いのだ。

「でも、おいしい牛乳という当初の目標に達したのは、永田照喜治さんの助言を受けてからでしょう」と深澤さん。
 それは20年ほど前のことだ。健菜倶楽部顧問・永田照喜治氏は、エサを安全な完全植物性に変え(当時は動物性タンパク質の混入が当たり前だった)、また永田農法で栽培した緑茶パウダーを加えるように提案する。それはベテラン牧童の「常識外れだ」という反発を招いたらしい。緑茶に含まれるカテキンの滅菌作用が牛にストレスを与えるかもしれないからだ。ただでさえ少ない搾乳量がさらに減ることは明白だった。

 しかし、乳牛の健康を考えれば、その提案は理にかなっていた。「搾乳量は減っても、品質にこだわろう」と当時の牧場長が決断したのだった。
 結果は時を待たずに現れた。そのときの驚きを、深澤さんは鮮明に覚えているという。
「それまで黄色かったミルクが真っ白く変わった。見事でした。しかも、味は濃厚なままなのに、後味がすっきりして、とても飲みやすくなった」
 分析では乳脂肪分や栄養価は変わっていない。しかし顕微鏡では、乳脂肪分の球が細かく、球の形が美しく整っていた。
「じつは、それ以前のジャージー乳は少し飲むだけで十分だった。でも純白のジャージー乳はごくごく飲める。おいしい牛乳とはこれだ!と思いました」
 製品化に当たっては、生乳の風味を生かすために65度30分の低温殺菌を採用。もちろん成分無調整で、1997年から健菜ジャージー牛乳のお届けが始まった。ほどなく健菜ジャージーバター、健菜ジャージーヨーグルトが開発されて、健菜の食卓を担ってきたのである。

歓迎していただけた販売再開

 ご存知のとおり、2011年の東日本大震災は健菜の産地にも影響をおよぼし、残念なことに、健菜ジャージー牛乳のお届けを中止せざるを得なかった。しかし、那須牧場は、飼育数を往時の半分に減らしながらも、いっそう飼料の安全性を重視し、牛の健康を高く保ち、おいしい牛乳を作り続けてきたのである。
 震災以後、継続して行っている放射能検査は、つねに「不検出」という結果だった。安全性は確認されている。
 そこで今春、健菜倶楽部は、牛乳入りコースの再開を決定。牛乳の販売再開は、予想を超える多くの会員の皆様に歓迎していただけた。そして、その知らせは那須高原の生産者たちを喜ばせ、力づけてもいる。


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