健菜通信:今月の特集

雪待ち吉川の畑しごと 永田農法で育てる菜花と芋

2016年01月01日
上越市吉川は、健菜米コシヒカリの栽培地。
米栽培の好条件を備えた環境は、野菜づくりにも力を発揮する。
永田農法の高い技術も活かされて、おいしい野菜が育っている。

平田秀雄さんのオータムポエム

 吉川に取材に訪れたのは、紅葉の真っ盛りの季節だった。間もなく雪が降り積もる。その前に終えなければいけない仕事は山積みなだけに、どの農家も忙しそうだ。
 まず、平田秀雄さんがオータムポエムを栽培しているハウスを訪れた。オータムポエムは菜花の一種で、とう立ちした茎と花芽を食べる。別名をアスパラ菜というのは、茎の食感や風味がアスパラガスに似ているからだ。
 平田さんはこの野菜を10年前から栽培している。例年、10月半ばに種を蒔き、正月明けから収穫を始める。取材時はまだ小さくてやさしい風情をしている葉が、これから、ぐんぐん増えて、畝の土が見えなくなるほどになるという。

「オータムポエムは寒さに強い。ハウスが雪におおわれて、葉がパリンパリンに凍りつく日があっても、脇芽がちゃんと出てくる」と平田さん。
 そして、寒さが深まるほどに甘みを増していく。

新しい試み

 じつは今年、平田さんは新しい栽培方法に挑んでいる。それはコンテナボックスを利用して、夏はトマトを、冬はオータムポエムを栽培する試みだ。清潔な土を使って病害虫を完全にシャットアウトし、土壌成分、水分、肥料を細かくコントロールして、野菜を栽培しようというのである。
 栽培歴が浅いトマトは、食味よりも安定した収穫をめざして栽培し、確かな手応えを得ていた。同じコンテナボックスで栽培するオータムポエムは、どれだけ食味を高めることができるかが勝負だと考えている。

 人間が環境をコントロールできるだけに、判断の差が品質に及ぼす影響が大きい。取材時も、同行していた山本秀一さんと葉や土の状態を丹念に観察し、これからの栽培法を話し合っていた。陽気で冗談好きの平田さんだが、この時は、たちまち表情が引き締まり、生産者としての厳しい一面が顔を出す。
 本誌がお手元に届く頃は、オータムポエムは収穫が始まっている。目指す品質に達していたら、このコンテナ育ちの野菜を出荷する予定だ。
「正月明けを楽しみにしていてください」
 平田さんからのメッセージだ。

中嶋巌さんの 里いも&自然薯

 この日、中嶋巌さんの畑は、里いもの収穫がほぼ終わり、わずかな株を残すだけになり、一方、自然薯は収穫まであと1か月という状態だった。
 健菜米コシヒカリを20年以上栽培してきた中嶋さんは、永田農法を熟知している。「その技術を野菜づくりにも活かしているんですね」というと、たちまち「そんなに都合よくはいかないよ」という反応が返ってきた。
「米だってまだまだ勉強中。まして野菜は......」と中嶋さんは言う。
 とはいえ、里いも栽培を始めて間もない5年前、東京の青果卸に持ち込んだ里いもは、「新潟でこんなに旨い芋ができるはずがない」と驚かれたらしい。
 それは、身が締まり、ねっとりと粘りがあってほんのり甘い里いもだ。

 掘り起こした里いもの塊を見ると、糸のように細い根がもしゃもしゃと生えていた。これは永田農法の生産者が「おいしい根」と呼ぶ独特の根っこである。肥料や水分を控えて育てた結果、作物が必死になって生やす根は旨みのもとになるミネラルやリン酸を吸収していく。この根の様子を見れば、たくましく成長し、養分を芋に凝縮していることが分かる。

吉川の赤い土

「吉川の土も、芋の味を決める重要ポイントですよ」と指摘するのは、山本秀一さんだ。吉川の土とは、米は言うまでもなく、山菜までがアクが少なくおいしく育つ赤土の重粘土。
 しかし、この土のおかげで、収穫から出荷までは重労働になる。一株ずつ、芋の周囲を掘り、茎の株元をもって引き起こす作業には、機械が使えない。その後、水で芋にこびりついた土を洗い流すのも容易ではない。
「里いもの名産地を訪ねてみると、ほとんどは砂状の土。それなら芋の形もきれいだし、収穫に機械も使える。簡単に土が落ちてくれる」と山本さん。
 そんな産地から見たら、吉川での里いもづくりは、労力がかかりすぎて常識はずれだそうだ。でも、中嶋さんと山本さんは口をそろえた。
「健菜倶楽部のメンバーのみなさんは、この味のよさを分かってくれるでしょう。踏ん張り甲斐があります」

 さて、その吉川の土の力が、さらに発揮されているのが、自然薯だ。
 山に自生する自然薯と同じように、滋養に富み、強烈な粘りと旨みがある一方で、アクがなくて食べやすい。味の濃さは類を見ない。
 その中嶋さんの自然薯は、15年前から、お届け野菜としても、また年末の特別販売品としてもご案内をしている。冬の健菜の美味を代表する作物だ。
 この日、収穫にはやや早いが試しに自然薯を掘ってみた。
 土から顔を出した自然薯は胴太で、長さは70〜80センチもある。そしてやはり、糸のような「おいしい根」がたくさん出現していた。

「いい感じですね」というと、「う〜ん、長さがもう少しほしいなあ」と、中嶋さん。中嶋さんには「これでいい」ということが滅多にない。「もう少しこうしたい」という気持ちが、作物の味を高めるのだと思う。
「自然薯は、年を越すと味が熟成してさらにおいしくなります。楽しんでください」
 中嶋さんからのメッセージだ。

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