さあ、収穫だ! 豊穣を朗らかに祝う生産者たち

上越市吉川区では、健菜米コシヒカリが収穫の季節を迎えている。
「健やかにおいしく」とすべてを尽くした生産者たちが、
収穫のタイミングを待っていた。

 9月10日、健菜米コシヒカリ栽培を牽引する生産者たちが大賀の棚田に集合した。
 秋を告げる青空のもと、カメラのファインダーをのぞく写真家が「美しいなあ」と感嘆の声を上げた。言われるまでもない。この光景を目にしたら、だれしも心が躍る。直立した稲の力強い佇まいも、稲穂の豊かさも、棚田を染め上げる澄んだ黄金色も、すべて「米は上出来!」と告げている。
 3人の生産者の表情も朗らかだ。稲穂を手にすると、いきおい「いつから収穫するか」という会話になる。棚田の主である中村昭一さんが、「あと2週間」と言えば、永田米研究会会長の山本秀一さんが、「ここは標高が高いから、他より1週間おそくなるね」と話す。

 中村高二さんが、稲穂の重みを手で計るようにしながら、「1穂で100粒はあるなあ。見事だ」と感心すると、昭一さんは「そうかね」と破顔した。
 今期の天候は理想とはほど遠いものだった。痛手なのは8月の出穂後、晴れ渡る日がなかったこと。実際、すでに収穫が始まっている慣行栽培の米は品質が悪く、低温による収量減が見込まれている。
「しかし、厳しい年ほど、健菜米の食味は高くなる傾向がある」と中村さん。山本さんもその意見に賛成だ。

「スパルタ農法という異名をもつ永田農法で栽培しているだけに、健菜米は逆境に強い。それに今年は低温下でゆっくり登熟しているので、食味も上がるにちがいない」と。
とはいえ、刈り取り前にぬか喜びは禁物。今年は生産者全員で全員の田んぼを訪ね歩き、気づいた点は忌憚のない批評を交わし、情報交換もした。詳細な記録を残し、理想の生育カーブを探ってもいる。

 生産者としてやれることはすべて尽くした。あとは、収穫のタイミングを逸しないことに尽きる。
 健菜米コシヒカリは、「比類のないおいしさ」をもつ米。そのおいしさを今年も維持できたか、いや、より高めることができたのか。その結果が分かるのは、半月後だ。

健菜米は倒さない

 この日は吉川区赤沢地区を訪ねた。平成の名水百選に選ばれた尾神岳・大出口泉水から流れ下る名水が注ぐ田んぼは、昔から旨い米が稔る特別な場所だった。そこに、塚田誠一さん、水瀬靖秋さんという2人の健菜米生産者がいる。
 仲間に加わったのは、20年以上前のこと。その動機を塚田さんは「永田照喜治先生の話を聞いて、特別な米を作ることに心ひかれた」と言い、水瀬さんは「革新的な取り組みに、参加したいと思った」と話す。品質の高い米が、価格で評価されることの魅力も大きい。
 「とはいえ、やってはいけないことばかり」と水瀬さん。「農薬も肥料もだめ。ふつうは特別栽培といっても農薬や肥料は5割減程度なのに、健菜米はほぼゼロ。その分、苦労が多い」

 でも、栽培を続けてきた理由は、「おいしいと言ってもらえるから」にほかならない。
 赤沢地区では、慣行栽培の稲の多くが完熟を待たずに倒伏していた。肥料をたっぷり吸収して長く伸びた茎は、重い穂を支える力がない。そして、倒れた稲は登熟を止めてしまう。
 そんな田んぼの隣で、2人の稲はぴしりと直立していた。
「私たちは倒さないよ」
 その言葉に自信がにじんでいた。

おいしい米はむずかしい

 最後に訪れたのは、永田米研究会の前会長・中嶋巌さんのもとだ。現在は、米作りの大半を息子の琢郎さんに託している。しかし、「究極の米を作りたい」という気持ちは衰えず、専用の田んぼで、挑戦を続けていた。
 その稲の様子は、昨年と少し違っている。
「わかりますか。硬いのが...」と中嶋さん。
 確かに、茎も葉も、そして稲穂までが力強く、ピシリとしているようだ。晩年近くに、故・永田照喜治先生がポツリと洩らした「これからは、灰が面白いですよ」という言葉をヒントにして、今年は、大量に出る籾殻を灰にして土壌作りをしたという。
 稲穂を見ると、良質な米が稔っていることに間違いはない。けれど、中嶋さんが目指す味に達しているのだろうか。
「『おいしい』って感覚は、食味値みたいな数字で表せるものじゃない。それだけに、おいしいって何だろうと考える」
「米作りはむずかしいね」
 こんな生産者の真剣な取り組みが続く。健菜米は進歩する。

健菜米コシヒカリ《頒布会》

平成29年度産、新米発送開始は、10月20日(金)です。
■価格:5キロコース/1回6,253円  2キロコース/1回2,700円
■送料梱包料:1回1,080円 ※お届けが同一の場合、2口目以降の送料はかかりません。
■精米方法:精白米、無洗米、七分搗き、五分搗き、玄米の中からお選びいただけます。

健菜米コシヒカリ

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