りんご王国の中心で高みを目指す
健菜通信:今月の特集

りんご王国の中心で高みを目指す

2017年12月01日
弘前市のりんご生産者を訪ねたのは8月下旬。岩木山の優雅な山容と果樹園が織りなす絶景の中に農園はあった。

「りんご王国の王都といったら、ここかな」
 棟方農園を目指して車を走らせていると、そう思わずにいられない。岩木山東麓の山岳丘陵地帯は、行けども行けども果樹園が続く。幹線をはずれて山道を登っても、目に入るのはりんごの木ばかり。訪れたのは8月末だったが、赤く色づいている実も多く、絵本の世界にでも分け入ったかのようだ。
「棟方さんの農園が見分けられるのかな」 
 そんな不安を口にした途端、他とは様子が違う果樹園が目前に現れた。広い園にまばらにりんごの木が植えられている。それらは大きく枝を開き、豊かに葉を蓄えているのに、地面には太陽の光がさし、その明るさや開放感は圧倒的だ。
「ようこそ!」
 取材チームを迎えた棟方健二さんは40歳。父の代から始まった健菜倶楽部との付き合いは、20年になろうとしていた。


かしましくない木

 棟方家は四代続くりんご農家だ。けれど、棟方さんが就農した頃、りんご生産は岐路に立たされていた。人気品種を作っていれば売れる時代は過去のものになり、価格も不安定。「どんなりんごを作っていくのか」と、農家自身の姿勢が試される、そんな時代が到来していた。
「収穫量を上げるのではなく、A品だけが穫れる果樹園にしよう」と決めたのは父。

農産物は色、形、サイズを主な基準にA、B、Cと等級分けされることが多い。りんごの場合、色むらがあったり、小さいとB品、傷があればC品だ。そのA品だけが実る農園にしようというのだ。志を同じくする生産者と研究会を作った父とともに、健二さんは技術を磨き、栽培方法を改良してきた。木に生らす実の数を大幅に減らし、施肥管理を徹底してきたという。
「今は、見た目が優れたA品を目指すだけでなく、安全でとにかくおいしいりんごをつくることが目的」と健二さん。
「だから、この農園は、何年間も土に全く肥料を与えていません。葉面散布をするだけです」と言葉を続けた。

 健二さん曰く「かしましくない木」、つまりは枝が混み合わずに広がっている樹形に仕立てているのは、吸収した養分と太陽の恵みが、果実に無駄なく行き渡るようにするためだ。"葉とらず"で活発な光合成を促進し、りんごの実は手回しでまんべんなく光を浴びさせる。最近は品種改良が進み、日照がなくても、真っ赤に色づく"ふじ"があるが、「私は作りません」。


食味を高める技術

 ふと見ると、樹皮に細い傷がある。ネズミに囓られた跡だろうか。
「違いますよ。これは環状剥皮とワイヤリング。樹勢が旺盛な6月に、ナイフで樹皮を薄く剥いだり、針金で幹を締め付けた跡です」
 これは根から吸収した養分が樹皮内の師管を通って他に配分されてしまうのを防ぎ、枝に留めておく方法だ。養分が無駄なく果実に凝縮し、糖度や栄養価が高まるという。
「やや難しい技術なので、実践しているのは、私たちの研究会仲間ぐらいでしょう」

 さて、現在、健二さんは7カ所の果樹園で、さまざまな品種を育てている。木の数は2800本ぐらい。その中で、健菜倶楽部に出荷するのは、最も高品質の果実がなる樹齢30〜40年の木で収穫したものに限っている。品種は、紅玉、ジョナゴールド、王林がメインだ。じつは生産者が減る一方の紅玉は、健二さんに「木を伐らないで」と頼み、栽培してもらっている。そのファンも多い。
 その紅玉はお届けを終えたが、りんごの本格的シーズンはまだ続く。どうか、心ゆくまでご堪能ください。

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