健菜通信:今月の特集

収穫直前! ほっぺが落ちる?真っ赤ないちご

2019年12月02日
25年前から、いちご一筋。
「おいしくなるように作っています」と話す生産者を訪ねた。

 熊本県菊池郡は名水の地だ。町の東部にある阿蘇外輪山の菊池渓谷がその源。標高500〜800メートルに位置する広大な広葉樹の原生林は地下に豊かな地下水を貯め、森の間を湧水が流れる渓谷を生んでいる。そして地下にはミネラル豊かな伏流水が、地上には菊池川がゆったりと流れ、その水が田園地帯を潤してきた。
 西口広聖さん(67歳)・恵子さん(63歳)の農園は、その中でも、江戸時代から米処として有名な七城町にある。町はメロンの名産地でもあり、米作とメロン栽培をする農家が多い。けれど、西口さんは25年前からいちごを作ってきた。そのおいしさを一途に追及してきた生産者だ。

化学肥料は、一切使わない

 農園を訪ねたのは12月上旬。ハウスには白く可憐な花が咲きこぼれ、つやつやと光る赤い実が、収穫されるのを待っていた。栽培しているのは「紅ほっぺ」と「恋みのり」。恋みのりは誕生して間もない新品種だ。
 「まずは一つ、食べてみて」と広聖さん。
 その場でさっそく頬張ってみる。大粒で、花のような香りが印象的だ。恋みのりの表面は真っ赤なのに、果肉は真っ白。口いっぱいに広がる果汁は、コクがあって甘い。
「ほっぺが落ちるほどでしょう。おいしくなるように、こだわって作っとるので......」
 それはどんなこだわりか。

 「まず、安全性」と即答したのは恵子さん。「孫にたくさん食べて、と言えるものを作ることが私たちの責任」と。
 夫婦は25年前、農薬の使用を可能な限りゼロに近づけ、化学肥料はいっさい止めたのだという。
 広聖さんは「大切なのは土づくり」と話す。西口農園では、春から夏にかけて土を太陽熱で消毒して、そこに発酵・完熟させた肥料「ぼかし」をすき込む。そして畝を普通の畑より高く盛り上げていく。こうすると、水はけが格段によくなる上、苗の根が酸素を取り込みやすくなるのだという。
「農園にまくのは、名水の町の地下水。ミネラルが豊富で、その水やりの塩梅が、いちごのおいしさの決め手」
 さらに、広聖さんは「ハウスの暖房はしません」と言い、「冬でも寒さに当てながら育てるので、成長に時間がかかりますが、その分、甘みやコクが高くなります」と話す。
「うちのいちごは光合成が活発。葉っぱを見て下さい」
 葉は小さくて肉厚だ。そして真っ直ぐ立ち上がり、太陽に向かって葉を広げていた。その元気な様子はたくましささえ感じさせてくれる。

摘花のストレス

 ところでなぜ、恋みのりを作ることにしたのだろうか。
 「おいしいことはもちろんですが、果皮が硬いことが得がたい長所なんです」
 果皮が柔らかいと、自分の重さやわずかな振動でも「オセ(摩擦でできる傷)」が出てしまうが、硬めの恋みのりは、その心配がない。だから、「心おきなく完熟を待って、おいしいままお届けできます」。さらにもう一つ。
「他の品種は、次々に花が咲くのに恋みのりは花が少ないことも魅力です」
その説明の意味が分からずに首をかしげていると、「摘花作業が減らせるだけでなく、心が痛まないのです」というさらに不思議な言葉が続いた。
 


「食味の高い果実を生らせるには、実の数を減らすためにたくさん花を落さなければなりません。農家は欲があるから、せっかく咲いた花を落とすのは惜しくて、心が痛む。その痛みが少なくて済むところがいいんです」
 その気持ち、分かります。さて、来年の1月下旬から西口さんの恋みのりのお届けが始まります。まだ、お申込みでない方は、本紙裏面のご案内をご覧のうえ、ぜひお申込みください。


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