某日、友人と出かけた居酒屋で、隣席から
「納豆」という単語が聞こえてきました。どうやら、職場の飲み会のようです。最年長と思われるおじさまが、
「納豆は醤油を入れる前に、まず、かきまぜなくてはいけません」と、納豆の食べ方について語っています。ちょっと偉そう。
「混ぜるほど、ねばねば成分が増えますが、良いのは時計回りに50回。醤油とねぎだけで食べるのが正しい...」
このあたりで、連れの友人と目が合いました。二人とも首をひねり、無言の会話が成立。そして「その拘り、めんどうくさい」「どんなトッピングをしてもいいじゃない」という思いが二人の間を行き交ったのでした。
その時、私は無性に納豆が食べたくなっていました。幸い、わが家の冷蔵庫には、健菜の青大豆納豆があります。さらに粕漬け沢庵と長芋もあり、
「明日の昼は、五色納豆で決まり!」と思っていたら、友人が「ねえ、五色納豆っておいしいわよね」と言うではありませんか。以心伝心、おじさまの拘りへの抵抗心があってか、彼女も正しくない(?)食べ方を思い浮かべていたようです。
もちろん、ほかほかの白ご飯と醤油やタレだけで混ぜた納豆の組み合わせは無敵。でも、それに引けをとらない、食べ方は色々ありますよね。
私は、五色納豆の時は、超大粒の青大豆納豆を粗く刻んで使うようにしています。その食感は市販のひきわり納豆のようにやわではなくしっかり。豆の風味が高くて、「こんなおいしい五色納豆、食べられるお店はないわ」と自画自賛したいほどです。いえ、実際、それほどの味かもしれません。
さて、隣席から若い女性たちの声が聞こえてきました。
「えー、キムチ納豆を食べたことがないんですか」
「チーズ納豆も、納豆オムレツもいけますよ」
「納豆トーストだってありです」云々。
おじさまが反撃されています。再び、私と友人の目が合いました。今度はうなずきあって「食べ方に、正しいも正しくないもないよね」と無言の会話を交わしたのでした。
(神尾あんず)
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