春が特別!魅惑のパパイヤ

春はパパイヤがおいしい季節。スーッと舌を滑る軽やかな甘みと、トロピカルな香りに加え、健康効果の高さも魅力です。明るい陽射しが南国果実栽培に最適な宮崎市から、生産者のご紹介です。

 南国果実と聞いて一番身近なのはバナナやパイン、そして最近ではマンゴーの人気が急上昇してきました。ところがパパイヤとなると、輸入品はおろか、国産品を目にする機会もめったにありません。
 それもそのはず。パパイヤの国内流通量は年間3000トンくらいしかなく、マンゴーの四分の一以下。国産パパイヤともなると、そのうち1割にも満たないのが現状です。
 皆様のパパイヤのイメージはどのようなものでしょうか。苦い、においが苦手...という方も多いのでは...?
「ちゃんと熟した国産パパイヤはとてもおいしいのに、まだまだ認知されていないのが残念ですねぇ」
 今回紹介するのは、宮崎県宮崎市の長友寛昭さん。息子・秀樹さんとともに、鮮やかな赤肉パパイヤ"サンライズ・ソロ種"の栽培を手がける生産者です。

学びの好奇心が栽培を助ける

 ハウスに入ると、大地を這う龍のようなパパイヤの幹が目に飛び込んできます。パパイヤは本来10メートルを超す高木ですが、ハウス栽培向けに横倒しすると、自然とぐるぐる渦巻くのだそう。
「日本は台風がありますから、高いとすぐに折れてしまいます。この方が作業もしやすいんですよ」
 1年に一時期しか収穫できないマンゴーと違い、パパイヤは年中花が咲き、実を付ける植物です。そのため収穫と手入れはつねに並行して行わなければなりません。

「隔日で収穫しながら、枯れた葉を取り除いたり摘花をしたり。とくに温度管理は毎日気が抜けません」
 ハウスは一定の範囲で温度管理していますが、日の出に急に室温が上がると、パパイヤの表面に結露ができて、傷みの原因になるのだとか。長友さんは、天候の変化にはことさら敏感に対応します。
「室温調節でハウスの窓を開けるときは、急激な温度変化を防ぐために風下を開けるんですよ。植物だけでなく、あらゆるところに意識を向けないといいものは作れません」
 そのために長友さんは、気象学や有機化学など、農に関わるさまざまな学問を学んだと言います。手探りながらも好奇心が知識を深める手助けとなり、その品質は年々上がっていきました。「国内では、パパイヤは生産量が少ないから、栽培や病理学の研究がほとんど進んでいません。すべて自分で判断しなくてはいけない。難しいけれどやりがいはあります」

適正な肥料で健やかに

 でもどんなにおいしいものを作っても、「パパイヤは苦い」というイメージを払拭するのはなかなか難しいことだいいます。それは苦い輸入品に当って、パパイヤはもうコリゴリという方が多いせいかもしれません。
「苦いのは未熟のせいだけでなく、肥料過多にこそ原因があるのだと私は考えています」
 肥料の中で、窒素は植物の成長に欠かせない重要な栄養分です。ふつうは肥料が土の中で菌に分解され、窒素分は硝酸態窒素の形となって植物に取り入れられます。この硝酸態窒素を代謝によりアミノ酸やタンパク質などに作り変え、栄養が充実することを、健菜では「植物が完全燃焼する」と表現してきました。

 ところが肥料の与えすぎで、この硝酸態窒素の代謝が間に合わず、植物に蓄積され人が摂取すると、ガンや酸素欠乏症の原因になる危険性が指摘されています。
「悲しいことに、農業に携わるものの多くは、農薬のことは気にしても、硝酸態窒素の問題には鈍感です。パパイヤの場合も硝酸態窒素が蓄積すると、枝側の生り口が苦くなりやすいのです。たまに『生り口は捨てて』なんて言う生産者もいるくらいですよ...」
 長友さんは果実全体が健やかに育つように、良質な肥料を選び、必要最低限だけ与えます。もちろん、安全のため農薬はほとんど使いません。

ゆっくり育つ春が最高

 一度でもおいしいものを味わえば、果汁の軽やかな甘みと、豊かな香りの虜になる人も多いパパイヤ。栄養はバランスがとれて申し分なく、体内毒素の解毒をサポートする成分・イソチオシアネートが豊富な健康果実でもあり、本当なら毎日でも食べていただきたい果物です。
「でもパパイヤは、果皮が柔らかく棚持ちが悪いので、お店が仕入れを控えてしまう。だから入手しにくいんです。健菜のように直接お届けしてもらえれば、本当においしい瞬間を味わっていただけますね」

 年中収穫できるパパイヤですが、春はとくにおいしいシーズンです。11月に花が咲き、低温の中で夏のものより1か月も長く栄養を蓄えながら成長するので、味がぐっとのっています。その上、追熟スピードもゆっくりなので、ギリギリまで樹上完熟を待つことができるのです。
「パパイヤのイメージががらっと変わるおいしさですよ。これを機にファンが増えてくれるとうれしい」健やか印の国産パパイヤを楽しみにお待ちください。

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