今年は豊作。さらなるおいしさへ 期待高まる吉川の秋。

健菜米の生産地・吉川は黄金色に染まっていた。
今年は豊作。人も景色も朗らかに収穫の時を待っている。

最後の仕上げ

 今年は、健菜米の収穫が早まりそうだとの知らせに、慌ただしく上越市吉川区を訪れたのは、9月10日のことだ。
 永田農法による米作りが始まってから28年。その間、これほど理想的な天候だったことはないというのは、今年、永田米研究会会長に就任した山本秀一さんである。程よい雨、夏の照りつける太陽と高温、そして旧盆を過ぎてから訪れた秋の夜の涼しさ......。どれもが、稲が喜ぶ天候だ。
 話はさかのぼるが、苗作りを前にした今年の春、生産者たちが、まず確認しあったのは、「より食味を上げること」だった。そのためにできることは全部やるのが、健菜米作りの基本である。とりわけ、皆が注力したのは、土壌に含まれる光合成細菌などの有用菌を活性化することである。無肥料栽培の米が比類のない旨さに到達するには、細菌の働きなくしてはありえない。天候に恵まれた今年は、その成果に大いに期待がもてそうだという。
 取材では、健菜米を栽培している三カ所の地区をまわり、話を聞いた。

 最初に訪れたのは、大岩地区の棚田。ここでは、塚田泰助さんと保高芳郎さんが、収穫のタイミングを話し合っていた。稲穂の茎にはかすかに緑の部分が残っている。その緑色の割合が、収穫適期の目安となる。
 ふつうなら「秋雨の前に」とばかり、すぐに刈り入れしてもおかしくない。そのほうが米粒の見映えはいいぐらいだ。しかし、健菜米は完熟で収穫するのがルール。
「あと7日というところかな」
「いや、10日は待とう」
 待つことが、春から努力してきた栽培の最後の仕上げだ。

雑草から学んで

 中村高二さんの農園は、庭園のようだ。畦の雑草は短く刈り込まれ、点在する無花果や柿の実が色づいている。
 この日、もっとも目を引いたのは稲葉の美しさ。緑色が抜け、透明感あふれる葉は、淡く光っている。葉の養分のすべてを籾の中に送り、稲は完熟の時を迎えつつあった。
「健菜米を作り始めたばかりの頃、永田照喜治先生に、自然に枯れていく雑草の色を見なさいと言われたんです」

 高二さんは、その言葉をしばしば思い出すという。窒素肥料を過剰に与えられた作物は、有害な硝酸態窒素を生成し、葉の緑色が濃い。健康な自然の植物には見られない色だ。それを教えられた高二さんの農園では、自然の色が再現されていた。
「今年の出来も、いいはず」
 高二さんは、収穫の時を楽しみに待っていた。

名人の反省

 中村昭一さんの棚田では、豊かな実りの景色が放つ力強さに圧倒された。しかし、昭一さんの第一声は反省の言葉だった。
「品質に対して欲張り過ぎてしまった」と。
 収穫量を上げようとしたのではない。より食味を上げようとした結果、稲の背丈が10センチ伸びすぎたのだ。慣行栽培に比べたら背丈ははるかに低く茎も太いのだが......。原因は、夏、田んぼを干すタイミングを2〜3日遅らせたことにある。
「土が乾くと、繁茂している毛細根が切れてしまう。養分を吸収している毛細根に、もう少し働いてほしいと思ってしまった」
 背丈が伸びたため、豪雨の翌日に倒伏する稲が出現した。すでに十分な食味に達し、品質に影響はないと分かっていても、昭一さんは悔しくてならない。それだけ、今年、「健菜米のおいしさ」にかける心意気が高かったのだ。
「米作りに完成はないですね」
 じつは、取材の数日前、約30年前から吉川町で永田農法の指導をしてこられた永田照喜治氏の訃報が伝えられた。その哀しみは大きい。「しかし」と、山本秀一さんは力強く言う。
「この米を見たら、永田先生にも褒めてもらえると思います」
 健菜米コシヒカリのお届けは、10月から新米に切り替わります。どうぞ、お楽しみに。

健菜米コシヒカリ《頒布会》
平成28年度産、新米の発送開始は、10月20日(木)です。


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