健菜れんこんは有明育ち。 名残の味もまた嬉しい。
健菜通信:今月の特集

健菜れんこんは有明育ち。 名残の味もまた嬉しい。

2017年02月01日

健菜れんこんは、有明の、海ではなくて土の幸。
収穫終盤を迎えた、生産者を訪ねた。


「真崎さ〜ん」

 ハス田の畦道から大きな声を張り上げても、収穫真っ最中の真崎秀昭さん(63歳)の耳には届かない。胸まで水に浸かり、大音響を響かせる水圧ポンプで泥をよけ、手探りでれんこんを掘り出していく収穫作業は、何回見ても頭が下がる。どれほどの重労働だろうか。
 それに、九州といえども風は冷たく(取材に訪れたのは昨年の2月)、あのゴム長姿では寒さは防げないはずだ。
「真崎さん、お久しぶりです」
 ポンプの音が止まった隙に、再び声をかける。今度は、真崎さんの右手が、「おお」とばかりに挙がった。掘り出したれんこんが傷つかないよう丁寧に「舟」に乗せると、真崎さんは畦道にやってきた。重い泥の中のため、その動作は何もかもがゆっくりだ。
「収穫は終盤ですよ」と真崎さん。
 この地区では、8月末かられんこんの収穫が始まり、お正月前後が出荷最盛期。味は走りの時期はシャキシャキと瑞々しいが、次第にほっこりと甘くなる。熟成が進んだ2月は名残の味を楽しむ、通好みの旬といえるかもしれない。
「今年の味はどうでしたか」
 その質問に「好評ですよ」と答えると、真崎さんの顔に笑顔が浮かんだ。「よかった」と。

干拓地育ちの特産品

 関東以北に出回るれんこんの多くは茨城県産だが、健菜では、有明海を囲む白石平野のれんこんをお届けしてきた。理由は、もちろん「味のよさ」にある。れんこんの品種は大きく分けて2種類。今日ではほとんど見られない、細長い日本の在来種と、明治期に中国から導入された太いシナハス種だ。白石れんこんはシナハス系ながら在来種に近い滋味、おいしさがある。粘りがあって、もちもち、ほくほくという食感も楽しい。 
白石は、江戸時代からの干拓事業で生まれた広大な田園地帯で、他産地には見られない独特の土壌に恵まれている。

それは、干潟由来のミネラルを豊富に含み、れんこん栽培に最適なキメが細かい重粘土質の土壌だ。昔は、適地という発想はなかっただろうが、大正11年にはれんこん栽培が始まり、そのおいしさから、今では佐賀県を代表するブランド野菜になっている。
 その中で、真崎さんは永田農法の理念に共鳴し、「より高いおいしさ」を目指して、健菜の栽培を続けてくれている。人柄はまじめで誠実、仕事はていねいだ。

選別を重ねて

「大きいほうがおいしい、というのは誤解。長さも太さもほどほどのものが、身質が緻密で、旨みがのっています」
 泥の中で育つれんこんは、肥料の吸収率が低いために過剰に肥料を施されがちで、肥大化してしまうことが多い。しかし、極力肥料を抑え、微生物が活発に働く土をつくってきた真崎さんのれんこんは、やや小ぶりで味が濃い。
「大切にしているのは種れんこんの選別です」
地下茎であるれんこんは、種子ではなく、収穫したれんこんの中から3割ほどを選別して、翌シーズンにそれを植え付けていく。だから、はじめは同じ品種でも年を重ねるごとに生産者による品質の差が開くわけで、周囲が認める真崎さんのれんこんは、選別の目利きの賜物に他ならない。

取材の翌週から、真崎さんは次作の準備を始める予定だった。土を深く耕し、5月には3〜4節ある種れんこんを横にして埋めていくと、やがて、節から新芽が出て葉が広がり、夏には清らかな花が咲く。その頃には、泥の中で地下茎(つまり、れんこん)が縦横無尽に増えている。
「葉や花から、地下の様子も分かるのですか」とたずねると、「そうありたいですね」との返事。簡単に「そうです」と言わないところに、誠実さがにじむ。
「今シーズンの収穫は間もなく終わりますが、夏にはまた出荷を始めます」と真崎さん。
 新物は青々と茂る葉をかき分けながら収穫した、走りの味だ。2月の名残の味もいい。走りの味も楽しみだ。


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