健菜通信:今月の特集

目指すは、若い人も感動する次郎柿

2017年09月01日
次郎柿の名産地に、質と味を極めようと挑戦している生産者がいる。
栽培6年目になる昨年の11月、その柿園を訪ねた。
 森下晃行さん(32歳)と待ち合わせたのは、浜松市北部にある絶景の柿園だ。次郎柿の名産地にあり、直売場と柿狩りで有名なその柿園では、散策を楽しむ人が秋景色を満喫していた。 「ここは師匠であり恩人でもある義父の農園です」 そう話す森下さんは新規就農者である。高校生の頃、ここでアルバイトをしていたが、一度は別の職業に就いていた。それが結婚後、義父から「応援するよ」といわれ、就農が実現。高齢化や離農で作り手がいなくなった柿園を引き継ぎ、森下さんの柿栽培は始まった。6年前のことだ。

 最初はすべて義父の栽培法を真似たという。
「けれど、今は、ぼくのやり方で柿を育てています」
 それは、どう違うのだろうか。森下さんとともに、彼自身の柿園に向かった。

若い人が求める食感と味

 その柿園には、まん中を貫くように広い空間があった。
「木を一列ばっさり伐り、太陽の光が入るようにしました」
 その代わり、森下さんは、義父や他の柿園のように葉をかき落とすことはしない。葉の枚数はできるだけ増やして、活発な光合成を促したいからだ。
 地面は下草に覆われている。害虫が嫌う下草を選んで植え、地中の保湿と余分な肥料の吸収に役立てている。やがて枯れる下草は土の養分にもなる。
 柿は樹齢30〜40年になるというが、その樹形は大きく自由奔放に見えるし、実が生っている枝も太い。
「ぼくは柿の質と味を極めたい。そのために義父とも、JAが推奨する栽培方法とも異なることをやっています」

 私たちが、農園で気づいたのは、独自のやり方の一部に過ぎない。
「これ以上の説明は勘弁してください。秘密もあるし」
 では、作ろうとしているのはどんな柿なのかとたずねると、即座に答えが返ってきた。
「若い人が『おいしい!』と感心してくれる次郎柿。大玉で、食感はシャキッとして、甘い柿です」
 柿は、熟すにつれて果肉がやわらかくなり、甘さも濃くなっていく。しかし、それは当たり前。森下さんが目指すのは、果肉が硬くてもみずみずしく、高糖度の次郎柿だ。そんな柿を作る方法も分かってきたという。
「だから、実践あるのみです」
 しかし、ベテランでなくても、そんな柿ができるのだろうか。
「できます。師匠と呼んでいる人たちが色々なアドバイスをしてくれるおかげです」

師匠が教えてくれたこと

 例えば、88歳の名人は、柿の構造や植物生理について、人の命になぞらえて説明してくれた。含蓄に富む教えは、今、柿の味を極めるための道しるべになっているという。
 一方で、最新の栽培技術を指導してくれる人もいる。
「義父から学んだことは数知れないけれど、最も大切なのは、『完璧を求めない』ということかもしれません」
 自然が相手の農業は計画通りには運ばないことが多い。考えすぎて思い悩むことが多かった森下さんは、直感に頼り、臨機応変に果樹と向き合う
義父のアドバイスで、「救われた」と話す。農業が楽しくなったともいう。
「今は師匠が6人に増えました。考え方や栽培方法はそれぞれ違いますが、共通しているのは何でも教えてくれること」
 素直に教えを吸収し、自分のものにして成長する姿は、師匠たちにとってもさぞ好ましいことだろう。
 数々の教えは、昨年、極上の次郎柿に結実していた。さて、今年の出来はどうだろう。11月には、栽培7年目の次郎柿をお届けする予定です。お楽しみに。

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