健菜通信:今月の特集

寒波到来! 熊本文旦の甘さがつのる

2019年01月01日
パール柑とも呼ばれる熊本文旦は、寒風の中で完熟していく。
収穫2カ月前の絶景農園を訪ねた。

「今年も、年中無休でした」
 中山浩治(63歳)さんは、苦笑いしながら話し始めた。宇土半島にある中山農園を訪れたのは12月上旬。早生みかんの収穫が早々に終わってしまい、オレンジ色が賑やかな絶景を撮ろうとしていたカメラマン氏を残念がらせた。
 中山農園では、健菜倶楽部でご案内している熊本文旦のほか、温州みかんやデコポン、はるか、甘夏など、収穫期の異なる10種類以上の柑橘を栽培している。このために、1年中作業に追われて、農閑期がない。前年も「息子夫婦と交代で1週間ぐらい休めるといいね」と話していたが、実現できなかったようだ。農作業に追われるだけでなく、作業しやすいように農道をつくり、新たに整地している農園もあるという。訪れる度に、中山さんは何か新しいことを始めている。

中山農園は、八代海に面した南斜面に広がっている。標高約300メートルの山の頂から海岸近くまで、段々畑が連なる絶景農園だ。 
 眼前には天草の山々がくっきり。目を凝らすと、天草諸島を結ぶ橋が見える。八代港に停泊中の豪華客船を発見することもあり、「見飽きることがない」と中山さん。
「ここから真っ赤な夕焼けを見ると疲れが消えます」

自然条件に恵まれた「暖段畑」

 中山さんが就農したのは40年前。小さな農園だったが、父とともに徐々に農地を広げ、今では4.5ヘクタールになった。この農園を中山さんは「暖段畑」と呼んでいる。陽光がもたらす暖かさと、急斜面の段々畑ならではの水はけの良さは、農園の強みだ。
その上、眼前の海からは潮を含んだ風が吹いて病害虫を防ぎ、果実の味に深みをもたらしてくれる。

「九州のほかの産地が不作な年でも、うちは順調なことが多い。自然環境のお陰です」

独自の肥料と栽培管理

 そんな農園でどんな栽培をしているのだろうか。熊本文旦の農園の前で話を聞いた。
「第一に農薬を可能な限り減らしています。除草剤は絶対に使いません」
 研究し、こだわってきたのは肥料だ。黒糖、海藻、天草の天然にがりなどを合わせた自家製堆肥で、微生物の活動が活発になる土壌をつくり、果樹を力強く育てるようにしている。
「硝酸塩が残留しないようにきめ細かく管理しています」
 果樹は、中山さんが「やわらかい剪定」と呼ぶ樹形に調えられている。細い枝に実がなっているので、枝がしなり、印象はやさしいが、養分のすべてが果実に集まる。

 熊本文旦の開花は5月頃。品質の高い文旦にするために、文旦ではなく晩白柚の花粉を雌しべに綿棒で付けていく。開花期間は短い。晴天の日を選んで手早く作業する。
 6月、着果した実が5センチ程度になったら、しっかりと袋をかけてしまう。
「無袋栽培だと農薬をつかわざるを得なくなるので......」
 熊本文旦は受粉から収穫まで240日もかかるだけに、傷や落果、病害虫などのリスクも大きい。袋はそうしたリスクも軽減してくれる。

 収穫は1月下旬。周囲の生産者より20日〜30日ほど長く樹にとどめ、完熟を待つ。さらに、1カ月保存し、酸味がまろやかになった頃に出荷する。
「文旦は少し苦みがあるのが特長ですが、うちは嫌な刺激がなく、甘い果汁がすすっと喉を通ります」
 熊本文旦は寒さに強い。これから寒さを浴びながら、糖度と旨みを高めていく。健菜倶楽部のフルーツ頒布会では、2月下旬のお届けを予定している。ぜひ、ご賞味ください。


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