切干だいこん

応用自在、和の食材

 2年前のこと。ボランティア活動のために1週間後に南米に旅立つという若い女性と、現地に持参する食べ物の話題になりました。南米のスタッフに和食をふるまいたいという彼女に、彼女の母親は肉じゃがの作り方を教え、荷物に醤油を加える気でしたが、本人が「重すぎる」と却下。 一方、私が提案した「カレールー」は「世界共通で受けるわね」とすんなり決まりました。
 ところが、「切干だいこんは軽いし、いいかも」という私の第2案は、意味が分からないとばかりに、キョトンとされてしまいました。
「う〜ん、地味。料理の仕方も分からない」と。

外国人には分からない?

 切干だいこんは高級な和食店ではお目にかかれない、素朴な家庭料理用の食材です。その良さが日本の女性ですらピンと来ないのだから、外国人には無理かな。それに、後日知ったのですが、来日外国人の多くは、乾物の切干だいこんの匂いをかぐと、ギョッと驚くのだとか。
 そもそも私自身、「おいしい切干しがある」と気づいたのは十年前のこと。もし、健菜の野菜に同梱されていなかったら、今ほど食卓に登場しなかったことでしょう。以前は、煮物以外のレシピを思いつかず、切干しの袋がいつまでも食品庫に残っていましたが、サッと水に戻すだけでサラダ、和え物、炒め物と色々使えることを覚えてからは、瞬く間に使い切るようになりました。
 栄養豊富なだいこんの水分が抜けた切干しは、滋養のかたまり。鉄分もカルシウムも豊富で、これを食べない手はありません。
 それに健菜の切干だいこんは、雪のように真っ白で料理映えがすることと、コリコリの食感と旨みが秀逸です。乾物に「旬」はないでしょうが、寒風で干し上げた新物が登場する2月は、切干しの旬といってもよいのではないかしら。


海外滞在におすすめ

 さて冒頭の話には後日談があります。くだんの女性が無事に帰国した時に開かれた一品持ち寄りパーティに、私は切干しを使った煮物と貝柱サラダを持参してみたのです。 彼女は出発前の会話をすっかり忘れていましたが、「切干しを持っていけばよかった」ですって。彼女が暮らした地方の町では、最近、「日本のかぶ」として世界中で栽培され始めているだいこんは、まだ手に入らなかったそうです。
 海外に長期滞在する時は、自分のために切干しを持っていくとよいですね。それに、和え物や煮物にしたら、外国人にも「おお和食!」と喜ばれるのではないでしょうか。だって、おいしいもの。
(神尾あんず)


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