健菜通信:今月の特集

「品種らしさ」が光る! 果物王国の名人果実 / 北海道余市郡・安芸農園を訪ねる

2012年10月01日
果実王国、余市で、ひときわ目を引く名人がいます。適地を選ぶ目、果樹の健やかさを保つ技、完熟を見極める勘をもつ、安芸慎一さんをご紹介します。

 なだらかな斜面を覆うワイン用のぶどう畑。整然と整理されたぶどう畑は、フランスの田園風景のようで、まるで絵画のように美しい。
 このぶどう畑の主は、北海道余市郡仁木町の安芸慎一さん。ここで栽培したワイン用品種カベルネ・ソーヴィニヨンは、健菜葡萄ジュースにも加工され、コク深い大人のジュースとして評価を得ている。
 安芸さんは、この地に広い園地を持ち、ぶどうを筆頭に、りんご、洋なしなどの絶品果実と「ササゲ」を手がける生産者だ。安芸さんと健菜倶楽部のつきあいは、健菜創業当初から、はや20年。安芸さんと永田照喜治氏との出会いからは30年を超え、氏の安芸さんへの信頼も厚い。

 安芸さんの果実は、品種の特性が存分に発揮され、どれも五感のすべてを刺激する、印象的で深い味わいだ。
「甘いだけが果物のおいしさではありません。酸味や食感、香り...品種らしさが際立ってこそ、おいしい果物と呼べるでしょうね」と安芸さん。
 品種らしさを引き出すには、作物にあった土地で、果樹の健康を保ちながら栽培し、焦らずにじっくり適期を見極めて、完熟で収穫することが重要だ。当たり前のことのようだが、これができる生産者は少ない。
「早い人は10日前くらいからりんごの収穫をはじめていますが、私はもう少し待つつもり」と安芸さん。どっしりとしたその風貌に、栽培への姿勢が重なった。


熟期を見極める繊細な目

 案内されたりんご畑には、いつでも収穫できそうな真っ赤なりんごが実っている。りんごの品種は多いが、安芸さんが栽培に選んだのは、つがる、あかね、昂林、ひめかみ。もっともメジャーなふじは作らない。
「北海道にはふじという品種があわないのだと思います。北海道産のふじは何かが足りない。私は、ここにあったものだけを選んでいます」
 どんなに技を尽くしても、作物が土地に合わなければ意味がないことを、安芸さんはよく知っている。
 さて、各品種を紹介しよう。
 つがるは、柔らかめの果肉で多汁。つがるの中にはいくつかの系統があって、安芸さんはその中から、味のよいものを選んでいる。
 あかねは、香り重視で酸味が強く、あまり甘くないとされるが、皮の赤みが果肉に移るくらいまで完熟させることで、糖度12〜13度を実現。生食でもおいしいが、主に健菜りんごジュースの原料として扱っている。

ひめかみは、ふじの甘味、食感をベースに、紅玉の香りが加わったりんご。パリッとして果汁も多いが、水分を絞って栽培することで香り豊かに仕上げた。
 そして昂林。いま安芸さんが一番気に入っている品種だ。「昂林は旨いですね。甘味、酸味のバランスがよく、果肉もきめ細かい。旬が短いのが難点ですが...」とのこと。
「この斜面は、赤土なので果肉にねばりが出てきます。水はけがよいので量はとれないけれど、南向きで日当たりがいい。どのりんごもいいですよ」
 このりんご園は、新しい場所に移して10年。樹も働き盛りを迎え、もっとも味が乗っている園地とのことだ。


追熟を経て最高の瞬間を

 洋なし園は斜面ではなく平地にある。河川由来の砂壌土で、こちらも水はけがよい土地だ。
 安芸さんが作る洋なしは、ブランデーワインとグランドチャンピオン。どちらも小ぶりの品種だが、姿も味も、まったく異なっておもしろい。
 ブランデーワインは、緑色の果皮で、洋酒のような芳醇な香り。グランドチャンピオンは茶色の果皮で、甘味の奥にしっかりとした酸味があって、特別なめらかな果肉。どちらも甲乙付け難いおいしさだ。
「30年前、グランドチャンピオンは10㎏500円にしかならなかったんです。当時はまったく知名度がなかったので...。そのあと会長(永田照喜治)と出会って、『こんなにおいしいなら、私が買います』と見いだしてもらいました。あの出会いがなければ、いま作っていなかったかもしれませんね」と安芸さんは笑う。
 とはいえ洋なしの知名度は、まだまだ低い。その原因は「追熟」の必要があるからではないかと安芸さんは考えている。
 洋なしは普通、収穫後10日ほど低温に当て、常温に戻したところで追熟がはじまる。消費者も、その追熟の熟期を見極めて食べなくてはならないため、「本当においしい瞬間で食べてもらえているのだろうか...」と安芸さんも心配だという。
「ご家庭では常温に置いて、枝の近くの果皮に細かいシワが寄るくらいが食べごろです。それから冷蔵庫で冷やしてどうぞ」。


余市の隠れた名産ササゲ

 洋なし園のすぐ脇にはササゲのハウスがある。安芸さんは「果物の合間にやっています」と言うが、きちんと整えられたツルの様子をみれば、片手間ではないことは明白。ササゲも余市の特産だ。
「極力水分を絞っているので、甘くて、さわやかなよい香りでしょう」
 果物同様、その繊細な感覚で栽培した野菜がおいしくないわけがない。モキュモキュと独特な歯ごたえで、筋っぽくなく、柔らかい。
 初夏から秋にかけて楽しめる美味。薄味で、風味を活かすように調理してください。


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