招き猫のいわれは、世田谷・豪徳寺の飼い猫が、彦根藩の殿様を雷雨の前に寺に招き入れたことに始まるとか。
じつはわが家のチャチャ丸も、招くことでは働き者。毎日、美猫ぶりをお披露目して、通行人を窓辺へとお招きしています。私を胡麻油好きへと先導したのも彼でした。
ある日、ふと気づくと、小皿の胡麻油をチャチャ丸が一心不乱になめているではないですか。「コラッ」と叱っても完全に無視。はじめは、行灯の油をなめる化け猫の話が頭をよぎり、ちょっとビビリました。でも、わが家一のグルメを夢中にさせている油の味が気になり、私も指先でひとなめすることに......。
「おお、香ばしい。これだけで十分おいしいわ」
つまり、バージンオリーブオイル同様に使えるということ。それに気づいてから、それまで漫然と使っていた胡麻油の存在感が増し、出番が増えました。もちろん炒め物は胡麻油。揚げ油にも胡麻油を加えます。すると天ぷらの風味が全く違うのです。
マイブームは、スープや蒸し物の仕上げに軽く回しかけること。料理の仕上げにひと味プラスする感覚です。
例えば、お粥。貝柱の出汁で炊いたお粥に、黄金色の雫をたらすと、たちまち芳香が立ちのぼる。アサリときゃべつの酒蒸しはコクを増して、食べ応えのある味になるといった具合です。
しかし、友だちにその話をしたら、「何を今さら」と言われてしまいました。彼女は、何種類かの胡麻油を使い分けているとか。私は健菜の「純正胡麻油」に満足して、探求がストップしてしまったのかもしれません。
製造の際、ごまを高温で煎れば煎るほど、油の色と味わいが濃厚になり、煎らなければ、あっさりと無色透明になるそうです。ただし、搾り方が問題で、化学溶剤で抽出されるものもあります。健菜の「純正胡麻油」は、熟練の職人が焙煎し、玉絞め機という昔ながらの機械を使い、低温で圧搾するので、栄養が損なわれず、ごまの風味が生かされるとのこと。なるほど、おいしいわけですね。
ところで調べてみたら、江戸時代、行灯に使われたのは菜種油や魚油が主。化け猫だけでなく、普通の猫も行灯の油皿に目がなかったそうな。どうやら油への招き猫は、わが家の猫だけではないようです。
(神尾あんず)
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